#01 線路に生きる人々

7年前、初めてインドを訪れたときのことだ。コルカタの中心部からそう遠くないパーク・サーカス駅をよく訪れた。ここには線路に沿って掘建小屋が建ち並び、電車に手が届くほどの目と鼻の先で、何千という人々が暮らしていた。インドに住むようになってからは、僕にとってこんなスラムの光景は珍しいものではなくなったが、当時は線路の上で遊ぶ子供達や昼寝をする男達をみてたまげたものだ。事故がおこらないのか不思議に思っていたのだが、ある日、写真を撮っている僕に向かって、ひとりのおやじさんが言葉をかけてきた。

「電車に気をつけろよ。ときどき子供が轢かれることがあるんだから」

物騒な場所とわかっていても、彼らには引越しするあてはない。仕事を求めて地方からでてくる貧困家族には、住む場所を選ぶ余裕などありはしないのだ。

(2008年12月)

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