[写真]トルコに撃墜されたロシア軍機「スホイ24」の同型機(2008年10月資料写真)(ロイター/アフロ )

 パリ同時多発テロは、過激派組織「イスラム国」(IS)に対する攻撃に変化をもたらしました。フランスとロシア、そしてアメリカが共同歩調を取るような機運が出てきたのです。ただ、ロシアの西側への接近には、さまざまな思惑があり、否定的な見方もあります。また24日に起きたトルコ軍によるロシア機撃墜は、両国の対立を呼び、こうしたロシアの戦略の変更を余儀なくしているともいわれます。中東事情に詳しい軍事ジャーナリストの黒井文太郎氏が、ロシアの思惑とその変化について解説します。

24日に起きたトルコ軍によるロシア機撃墜

 11月24日、シリア北部のトルコ国境で、ロシア軍の爆撃機Su-24がトルコ軍のF-16戦闘機に撃墜されるという事件が起きました。トルコ側によると、ロシア軍機が領空侵犯し、再三の警告も無視したので撃墜したとのこと。他方、ロシア側は領空侵犯を否定し、むしろトルコ軍機がシリア領内を侵犯したと主張しています。

 現場はトルコ領がシリア側に突き出た国境線になっており、ロシア軍機はおそらくその部分を日常的に横断侵犯していたのではないかと思われます。トルコ軍機がそれに対して攻撃したところ、被弾したのはすでにシリア領内に入った地点だったという可能性が高いと思います。戦闘機にとって、1キロや2キロなどは瞬く間に移動する距離だからです。

 いずれにせよ、こうした事態の勃発により、ロシアの対シリアの方針は若干変更を余儀なくされたといえます。

仏テロ受け対ISで欧米と共闘を模索

 ロシアは9月末のシリア空爆開始から、一貫してアサド政権を支援するため、アサド政権と対決している反IS系反政府軍諸派への攻撃をメインに行ってきました。シリアへの軍事介入の口実としては、欧米を刺激しないために「共通の敵」である対IS戦を掲げていたのですが、実際には対IS戦は空爆全体の10%以下に留め、反IS系反政府軍諸派を攻撃してきたのです。

 しかし、11月13日のパリ同時多発テロで、国際社会が対IS壊滅に大きく動き出したことを見て、戦術を変えました。たとえば10月31日のエジプトでのロシア民間機墜落事件に対しても、それまではロシア国内世論を考慮してテロ否定説に立っていたものが、一転してISによるテロと断定。同じテロ被害者との立場で、シリアでも対IS戦での共闘を欧米に持ち掛けるようになったのです。