経営再建中のシャープが、大阪の本社を奈良県天理市に移すとの報道が出ています。同社では天理への移転は否定していますが、移転を検討していることは認めています。日本の製造業は東京や大阪など大都市に本社を置いているケースが多いのですが、これは合理的な選択なのでしょうか。

経営再建中のシャープが大阪の本社移転を検討

 シャープは大阪市阿倍野区にある本社の移転を検討しています。同社は資金捻出を目的として、本社ビルをニトリホールディングスに売却することを決定しています。奈良県天理市にある天理工場に本社を移転するとの報道もありましたが、天理への移転については否定しています。

 シャープに限らず、日本の製造業は、製造や開発の拠点が地方にあっても、本社は東京や大阪など中心地に置くケースが少なくありません。日立製作所は茨城県日立市で創業し、製造や開発の拠点は今も日立ですが、東京都内に本社を構えています。御茶ノ水にあった日立の本社は、自社ビルでしたが、経営難に陥った2003年に売却、その後は、東京駅前の丸の内にオフィスを移しています。

 NECも経営危機をきっかけに芝(港区)にある本社ビルを売却しましたが、その後もファンドから賃借する形で本社として使用しています。両社の動きからは、たとえ経営難になってもできるだけ東京からは離れたくないという意識が垣間見えます。

 最近の例では、大規模なリストラを実施したルネサスエレクトロニクスが、大手町の本社を引き払っていますが、江東区の豊洲に新本社を構えており、やはり23区を維持しました。

 パイオニアのように23区維持が不可能だったケースもあります。同社はかつて目黒に立派な本社ビルを構えていましたが、経営危機からビルを売却、川崎市の事業所に本社を移しています。しかし川崎の事業所も売却が決定し、今度は逆に都内への移転を検討しているようです。

 一方、トヨタ自動車のように創業した場所にこだわっている企業もあります。トヨタは全世界で事業を展開するグローバル企業ですが、本社機能や国内工場の多くを愛知県の豊田市や安城市に残しています。トヨタの外に出ない姿勢は、孤立主義を唱えた米国のモンロー大統領にちなんで「三河モンロー主義」などと言われたこともあります。同じ自動車メーカーで、創業時トヨタとの関係が深かったホンダは、浜松市から東京に本社を移転しました。

 製造業は、グローバルに展開するのが当たり前の時代ですから、国内の大都市に本社を構える意味は薄れてきています。海外のグローバルな製造業も、ニューヨークのど真ん中に本社を構えているケースは多くありません。IBMはニューヨーク州郊外のアーモンクという小さな街に本社がありますし、GE(ゼネラルエレクトリック)社は、コネチカット州フェアフィールドが本社です(現在、税金などの問題から移転を検討中)。

 日本はかつて護送船団方式と呼ばれたこともあり、企業が官庁のお伺いを立てるという風潮が今でも残っています。東京に本社があることについては、それが企業のステータスになっており、官庁との関係の近さを担保するという意味があるのではないかと指摘する人もいます。

(The Capital Tribune Japan)

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