[写真]同人誌即売会「コミックマーケット」の様子。人気作品には長蛇の列ができる(Rodrigo Reyes Marin/アフロ)

 冬の「コミックマーケット(コミケ)」が29日に開幕します。コミケは日本最大の同人誌即売会ですが、その関係者にはある懸念がありました。環太平洋戦略的経済連携協定(TPP)で合意された「著作権侵害の非親告罪化」です。

 TPPで著作権侵害の一部を非親告罪とすることで合意したことを受け、国内の著作権法改正の検討が進んでいます。そのなかで注目を集めるのが、同人誌などに代表される“2次創作”の取り扱いなのです。文部科学相の諮問機関・文化審議会著作権分科会の小委員会は、「2次創作は非親告罪化に含めない方向で議論を進める」としました。しかし、本当にこれまでと同じように安心して同人誌などの創作活動を続けることができるのでしょうか? 著作権法に詳しい「骨董通り法律事務所」の桑野雄一郎弁護士に聞きました。

そもそも非親告罪って何なの?

[写真]2次創作の法律上の概念が明確ではないと語る「骨董通り法律事務所」桑野雄一郎弁護士

 まず「非親告罪」の前に、「親告罪」から説明します。「親告罪」とは、犯罪事実を申告して処罰を求める意思表示(告訴)がなければ、公訴を提起することができない犯罪のことです。そして、告訴できるのは「犯罪で被害を受けた者」等に限定されます。現状では著作権侵害をしても,著作権者が告訴しない限り刑事裁判にかけられることがありません。「著作権侵害罪を親告罪とするのは、守られるべき利益はあくまで著作者の権利であり、その権利者が望んでいないのに処罰をする必要はない(桑野弁護士)」とのが理由からです。これが非親告罪化となると、告訴がなくても刑事裁判にかけられるようになり、罪を問いやすくなるのです。

 TPPでは、著作権について「著作権、実演家の権利又はレコードに関する権利を侵害する複製に係る罪のうち、故意により商業的規模で行われるものについて、非親告罪とすること。但し、非親告罪とする範囲については、市場における著作物等の利用のための権利者の能力に影響を与えるものに限定することができること」と定めています。桑野弁護士は「TTPという外交の場の、ある程度の合意が求められる状況のもとで、これくらいの裁量を残せたのであれば、交渉としては成功していると思います。具体的には『但し書き』があるので、どの範囲を非親告罪にするかどうかを日本側でさじ加減ができるのです」と、各国の文化風習などに合わせて制限できることについて評価しました。