12月28日に行われた日韓外相会談は、慰安婦問題について両国が「最終的かつ不可逆的に解決」することで合意しました。画期的と評されるこの「政府間の合意」は、日本政府が元慰安婦支援のために約10億円を拠出することや、韓国政府がこの問題を二度と蒸し返さないことを約束したものです。ただ、90年代の「アジア女性基金」の例もあり、本当に最終的な決着に向かうのか、懐疑的な見方や批判的な声もあります。今回の合意をどう評価するか。元外交官の美根慶樹氏に寄稿してもらいました。

【写真】慰安婦問題合意、再び問題を蒸し返されてしまう可能性はないのか?

難関だった請求権問題での日韓の溝

[写真]12月28日の日韓外相会談の後、合意内容について共同会見する岸田外相(左)と韓国・尹外相(Lee Jae-Won/アフロ)

 12月28日、岸田外相と韓国の尹外相との会談で、これまで長らく両国にとって大きな問題であった慰安婦問題について合意が達成されました。さる11月の安倍首相と朴槿恵大統領との首脳会談で交渉を加速するとの合意に基づき、双方が努力を積み重ねた結果であり、今回の合意により慰安婦問題は両政府間で最終的に解決されることになりました。画期的な成果であったと思います。

 交渉における最大の難問は、日本側は、慰安婦問題を含め請求権問題は1965年の請求権・経済協力協定で解決済みであるとの立場であったのに対し、韓国側は人道問題であるので解決していない、日本は国家補償をすべきであるという立場だったことでした。

 日本側は、今回の合意に基づいて日本が行う予算措置や日本政府が責任を痛感していることの表明は法的な補償ではない、請求権問題は同協定で解決済みだということに変わりはないという立場だと思います。岸田外相の発言にはそのことについて直接の説明はありませんが、「日本政府の予算により、全ての元慰安婦の方々の心の傷を癒やす措置を講じる」という表現がそれを間接的に物語っています。「心の傷を癒す措置」というキーワードについてはさらに分かりやすい説明がほしいところですが、この解釈は日韓それぞれにゆだねられているのでこれ以上の説明はしません。

日韓両政府が立場を損なわない合意

 一方、韓国側は、日本政府が元慰安婦のために拠出をすることは、かつての「アジア女性基金」の際にはなかったことで、今回日本政府が決断したのだと説明することができるでしょう。アジア女性基金の際に日本政府が拠出したのは事務経費など「アジア女性基金」事業を支援するためでしたので、今回、日本政府は確かに一線を越え、慰安婦のために拠出することにしました。

 また、日本政府は「責任を痛感している」と岸田外相が明言しました。この点もアジア女性基金の場合の、橋本首相の元「慰安婦」にあてた書簡の「道義的な責任を痛感」とは微妙に違った表現です。今回は、「道義的な」という言葉がありませんので、韓国側は、日本側が「元慰安婦に同情しているだけでない。自ら犯したことに責任があると言っている」と説明できるでしょう。日本政府が国家責任を認めることにこだわってきた人たちに説得力が出てきます。

 さらに、「安倍首相が心からおわびと反省の気持ちを表明する」は、橋本首相の書簡と、細かい表現はともかく、同じです。つまり、日韓両政府がそれぞれの立場を損なうことなく今回の合意に達したのであり、国家補償問題について非常に賢明な解決をしたと思います。