若き天才ストライカーの視線の先はどこに(写真:田村翔/アフロスポーツ)

 同じ言葉を3度繰り返した。2年ぶりに元日に行われた天皇杯決勝。4万3809人が詰めかけた味の素スタジアムで浦和レッズを2対1で振り切り、連覇を達成した試合後の取材エリア。来シーズンの去就を問われたガンバ大阪のFW宇佐美貴史は、「ノーコメント」を3連発した。

 もっとも、すべての「ノーコメント」で表情とニュアンス、そしてトーンが異なっていた。

――来シーズンに関してはどのような考えなのでしょうか。
 数秒の沈黙の後に「ノーコメントでお願いします」と返した宇佐美だったが、心なしか「ノー」の部分の語気をやや強めている。この場では話しません、という意思表示にも聞こえたなかで、すかさず次の質問が飛ぶ。

――まだ決まっていないのか、あるいはこれから考えるのでしょうか。
 今度は苦笑いしながら「ノーコメントでお願いします」と、懇願するように言葉を返した。取材者を見つめる姿からは、察してくださいよ、という本音が透けて見えた。

――それでも、自分のなかではもう決めているのでしょうか。
 最後は間髪入れずに「ノーコメントです、もう。はい、すみません」と、去就に関する質問を終わりにしてほしいとばかりに頭を下げた。

 シーズンが終わりに差しかかった段階で、宇佐美に対してヨーロッパの複数のクラブが興味を示しているという報道が飛び交った。
 具体的な動きを見せたのはブンデスリーガのシュツットガルト。ドイツ国内で「宇佐美獲得へ動き出す」と報じられたのは昨年11月上旬。実際に同22日に行われたモンテディオ山形とのセカンドステージ最終戦を、スカウト担当のギド・ブッフバルト氏が視察に訪れている。

 元レッズ監督のブッフバルト氏は宇佐美に対して高い評価を与えたが、その後の具体的な動きは報じられていない。同じくブンデスリーガのブレーメン、フランスリーグの強豪マルセイユ、オランダの名門PSVの名前もあがったが、シュツットガルトと同じ状況が続いたまま年を越した。

 宇佐美は2011年夏に、ブンデスリーガの強豪バイエルン・ミュンヘンへ移籍。大きな注目を集めたが、ワールドクラスのスター選手たちが繰り広げる、弱肉強食の競争のなかにすら加わることができず、1シーズンで戦力外通告を受けた。
 本人の強い希望で挑戦を1年延長。ホッフェンハイムへ新天地を求めたが、シーズン終盤になると出場機会が激減。シーズン閉幕を待たずに、2度目の戦力外通告を受けた。

 バイエルン・ミュンヘンとホッフェンハイムへは、ガンバからの期限付き移籍という形だった。宇佐美の心のなかには納得できない部分があったが、ガンバから期限付き移籍の再延長はないと通告を受けたことで、2013年5月にガンバ復帰を決めている。