自民党の小泉進次郎・農林部会長が「農林中金はいらない」と発言したことが波紋を呼んでいます。現在の融資姿勢は農家のためになっていないということを批判したのですが、果たして農林中金とはどのような金融機関なのでしょうか。

「農林中金はいらない」と発言して注目を集める小泉進次郎氏(撮影:2015年10月、ロイター/アフロ)

 小泉氏は14日、記者団に対し「貸出残高のうち農業の融資に回っているのは0.1%だ」と述べ、農業への貢献が少ないと批判しました。

 農林中央金庫(農林中金)は、かつては特殊法人でしたが、現在は民間金融機関となっており、JAバンクグループの一角を構成しています。もともとは、農林水産業におけるメインバンクとして、農林水産業を支援する目的で設立されました。しかし、実際には各地のJAバンクに預けられた預金を集め、一括運用する機関としての役割が濃くなっています。

 JAグループは農家から90兆円ほど預金を集めていますが、このうち約50兆円が農林中金に集められ、集中的に運用されています。農業従事者から集めた預金を適切に運用することも支援策の一環ですし、農家への直接的な支援は各地のJAバンクなどが行っていますから、同行が何もしていないというわけではありません。しかし、見方を変えれば、JAバンクの経営を助けているだけという解釈もできますから、農家のためになっていないという小泉氏の発言にも一理あるわけです。

 農林中金は、各地のJAバンクから資金を集めるという事業構造ですから、黙っていても預金を獲得できるという、銀行マンにとってはまさに夢のような会社といってよいでしょう。一般的な銀行はボーナス時期に合わせてキャンペーンを打ったり、退職金をもらうサラリーマンの家庭に何度も足を運んだりと、預金を集めるために相応の努力をしています。銀行業務の中でもっとも重労働である預金獲得をしなくてもよいので、金融業界において農林中金はあこがれの存在でもあり、半分やっかまれる存在ともいえます。

 こうした恵まれた環境は運用の面でも発揮されています。集められた預金は、一般的な融資ではなく、多くが有価証券に投資する形で運用されています。農林中金は世界でも屈指の機関投資家といわれており、農林中金からの運用委託や売買の注文を獲得しようと、各金融機関が激しい営業攻勢をかけています。

 もっとも農林中金は、ただ黙って座って他の金融機関からの営業を受けていればよいというわけではありません。JAグループの経営は近年苦しくなっており、集めた預金を高い利回りで運用しなければならないというプレッシャーにさらされています。このため時には行き過ぎた運用を行ってしまうこともあり、米国の住宅バブルの崩壊では、巨額の損失を計上した過去もあります。

(The Capital Tribune Japan)