昨年10月、環太平洋経済連携協定(TPP)が12カ国の間で同意された。WTO設立以来、最大の国際貿易協定となる。TPPは参加した12カ国のさまざまな産業に対して大きな影響を与えるだろう。今回の交渉で最も難航したと伝えられているのが、製薬産業だ。TPPによって日米の製薬産業はどのように変化するのだろうか。米プリンストン大学のウッドロー・ウィルソン国際公共政策大学院教授で、日米関係と国際貿易の主な専門家のクリスティーナ・デイビス教授に聞いた。

「製薬分野について、アメリカは大きな譲歩をした」

アメリカの市販薬(中野宏一撮影)

 デイビス教授は「製薬産業に関する交渉は、最も議論が分かれた論点のひとつだ」という。「新薬の知的財産権に関する交渉で、アメリカは孤立していました。アメリカは、特に次世代の主力製品と考えられている『生物製剤』に対して、より長い独占期間が得られるようにと強硬な立場を取っていました。他の政府が5年間の独占期間を主張していた一方、アメリカは12年間を要求していたのです」

 交渉の最後の瞬間で合意に到達したが、デイビス教授は「交渉官たちは、どの交渉官も何かを得たと考えることのできる結果に、なんとか辿りついたと思います。それは、それぞれの立場の真ん中を取った妥結でした」と評価する。合意では最終的に、新薬のデータは5年以上、生物製剤については8年以上のデータ保護期間となった。

 「アメリカの製薬業界は、この結果が彼らが望んでいたほどの成果ではなかったと抗議を続けています。アメリカでは製薬業界が非常に強い圧力団体であり、これが国内で難しい点となっています。実際に、アメリカ政府は医薬品に関して、他の交渉参加国に対しいくつか大きな譲歩を行いました。他の交渉参加国は、独占権は長期にわたって薬剤の価格を跳ね上げる傾向になるので、より早く利用可能にするべきだと主張していました。(米国内での採決へ向けた)製薬業界の展開を、見守る必要があるでしょう」

アメリカの主張の背景は

 アメリカは世界最大の薬剤生産国のひとつであり、アメリカと日本は、世界第1位と2位の医薬品市場だ。これに対し、オーストラリアと他の一部の参加国は、より短い特許期間を主張していた。