私たちの公的年金に21兆5000億円の損失が出ているという話がネットで広がっています。これはツイッターで拡散した人の誤解であり、本人も訂正し謝罪もしていますが、公的年金が2015年の7~9月期に約8兆円の運用損を出したのは事実です。本当のところ私たちの年金運用はどうなっているのでしょうか。また、誤った情報が拡散したのはなぜでしょうか。

現在の運用残高は135兆円

年金運用で21兆円の損失が出たというデマが広がった(ロイター/アフロ)

 私たちが支払った年金保険料は積立金という形で運用が行われており、現在の運用残高は135兆円ほどになっています。以前は積立金のほとんどが安全な国債で運用されていましたが、安倍政権になり運用方針が抜本的に見直されました。

 国債の比率が60%から35%に低下し、国内株の比率は逆に12%から25%に引き上げられました。外国株を合わせると全体の50%が株式という構成になっています。インフレが進むと債券価格が下落するため、債券中心のポートフォリオでは損失が発生するリスクが出てくるというのがその主な理由です。

 公的年金が株式の購入を始めると株価は急上昇していきました。その結果、年金運用の成績も上がり、2014年度(通年)には15兆2922億円のプラス、2015年4~6月期は2兆6489円のプラスとなりました。つまり年金は自らの買いで株価を押し上げ、高い運用実績を上げたことになります。

21兆5000億円は、年間で想定される損失の最高額

平成27年度第2四半期運用状況

 しかし、リスクの高い株式に国民の最後の財産である年金をつぎ込むことには批判の声もあり、国会でも議論となりました。昨年の1月に政府が年間で想定される損失の最高額として提示したのが、この21兆5000億円という数字です。あくまで損失の推定額であり、実際の損失額ではないのですが、これが誤解されてしまったようです。

 2015年4~6月期までは確かに順調な運用でしたが、7~9月期は中国ショックで日経平均は大幅に下落し、公的年金は約8兆円の損失を出す結果となりました。18兆円近くの利益を上げたあとの8兆円の損失ですから、トータルではプラスとなっています。しかし今年に入って日経平均は値を下げていますから、損失はさらに拡大しているかもしれません。