昨年9月の判決ではアイドルに損害賠償命じる

 このような背景から提起された損害賠償を求める裁判。具体的に司法はどのように判断したのでしょうか? 昨年9月の裁判では、アイドルグループのメンバーだった未成年女性が、異性との交際を禁じた規定に違反したと裁判所が認め、元アイドルに約65万円の損害賠償の支払いを命じる判決を出しています。

 佐藤弁護士は「会社が初期投資した一部の費用を、元アイドルも負担するという内容です。本件では、未成年のアイドルが男性ファンと一緒にホテルへ行っており、より世間に悪い印象を与えたと考えられます。さらに交際発覚の影響もあって結果的にアイドルグループは解散し、マネジメント会社に大きな損害を与えています。元アイドルに全く責任がないとは言い切れないのです」と述べ、判決を評価しました。

今年1月の判決ではアイドルに損害賠償はなし

 同様の事案で、アイドルグループのメンバーだった成人女性がファンとの交際を禁じた規定に違反したとして、マネジメント会社が女性らに損害賠償を求めた訴訟では、今年1月18日に請求が棄却されました。アイドル側が損害を賠償しなくて良いとの判断です。裁判長は「異性との交際は幸福を追求する自由の一つで、アイドルの特殊性を考慮しても禁止は行き過ぎだ」と述べています。

 「アイドルビジネスの成り立ちから交際禁止規定の一定の合理性はある」と、昨年9月の判決同様の理解は示しています。その一方、前回の判決では触れなかった幸福追求権に言及し、「たとえアイドルでも恋愛については、一人の女性として幸福を追求する権利があり、これを妨げてはいけない」と踏み込んだ判断を下しました。このバランスを取るため、「交際禁止規定を守らなかったら、すぐに損害賠償を負うというのはやりすぎ」としたのです。つまり「恋愛禁止規定を守らなくてもまったく損害賠償を負う必要はない」のではなく、「故意に会社への損害を与える目的で交際発覚を公表する場合は、幸福を追求する自由があってもアイドルは損害を負担の必要はある」としているのです。

 今回はそのようは損害を与える目的が見当たらなかったことなどから、損害賠償の必要はないとの判決になったようです。また、昨年9月の裁判では、初期投資分の損害などに対する賠償、1月の裁判ではアイドルグループが将来活躍し、て得られるはずの利益に対する損害などの賠償と、損害賠償の請求内容が違ったことも影響しているようです。まだ発生していない損害などについては認められなかったのです。

今後の裁判の行方はどうなる?

 アイドルが交際禁止規定に違反し、そのマネジメント会社が損害賠償を求めるという類似した裁判で判断が分かれた今回のケース。今後の推移はどうなるのでしょうか? 佐藤弁護士は「両裁判とも地裁判決で、さらに裁判長も異なっています。また違う判決になる可能性があります」と、推移を見守っています。

 ただ、傾向としては、アイドルへ初期投資分の一部の賠償は認められ、将来得られるはずだった利益への損害については、「会社への損害を与える目的があった交際かどうか」で、損害賠償の有無が判断されるのではないでしょうか。

(ライター・重野真)

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