経営再建中のシャープは、台湾の鴻海精密工業から出資を受け入れる方向で協議を進めています。両社には見解の相違があり、最終的な合意までには時間がかかるかもしれませんが、日の丸ファンドである産業革新機構による出資の可能性は現時点ではかなり低くなった状況です。鴻海は過去にもシャープ買収を試みたことがあるのですが、鴻海とはどのような会社で、なぜシャープを欲しがるのでしょうか。

すべてにおいてスケールがケタ違い

鴻海の郭台銘(テリー・ゴウ)氏は本土にそのルーツを持つ「外省人」(ロイター・アフロ)

 同社は、台湾の郭台銘(テリー・ゴウ)氏によって1974年に設立されました。スマホや薄型テレビの生産を受託する「EMS」という分野で世界トップ・クラスの企業です。EMSというのは、最終製品を製造するメーカーから製品の製造などを受託する業態で、鴻海は、アップルのiPhoneの製造を一手に引き受けているほか、ソフトバンクの人型ロボットであるPepperを製造していることでも知られています。

 成都や大連など中国の大都市に20万人規模という想像を絶する大きさの工場を次々と建設し、世界をあっと言わせました。2014年12月期の売上高は約15兆円と、日本の大手電機メーカーをはるかに上回ります。また最近では、労働集約型企業からの脱却を目指しており、生産ラインの多くをロボットで自動化する計画をブチ上げています。とにかくすべてにおいてスケールがケタ違いに大きいのが特徴といえるでしょう。

台湾企業でも実質的には中国企業に近い

 鴻海は、本社が台湾にある台湾企業ですが、実質的には中国企業に近い存在です。郭氏は台湾出身ですが、本土にそのルーツを持つ「外省人」であり、中国本土で本格的に事業を展開しているというのがその理由です。

 台湾は戦後、中国共産党と国民党との間で内戦となり、敗れた国民党は台湾に避難して中華民国を継続しました。台湾には、国共内戦時に中国から渡ってきた国民党員を中心とする「外省人」と、もともとから台湾にいる「内省人」の対立があります。台湾では長く国民党による独裁が続いたので、政財界の要職は外省人で占められ、内省人は冷遇されていました。

 このため内省人は起業家として身を立てる人が多く、IT企業の創業者には内省人をよく見かけます。しかし、郭氏は、外省人家庭の出身で、そのルーツは中国本土にあります。当初、国民党と共産党は敵対していましたが、その後、台湾独立を目指す民進党が勢力を伸ばすようになってからは両党の距離が近くなりました。これによって、台湾から中国に渡って事業を拡大する外省人の実業家が増えていったのですが、郭氏もその一人です。

 鴻海は製造受託のメーカーとしては圧倒的な規模ですが独自ブランド「FOXCONN」はあまり有名ではありません。またアップルは、家庭用テレビなど家電分野への進出を計画しているという噂があり、もし実現すれば大型の液晶パネルを押さえていることは非常に有利に働きます。鴻海がシャープを欲しがるのは、このあたりに理由があるのかもしれません。

(The Capital Tribune Japan)