長野県須坂市の「世界の民俗人形博物館」で1000体もの「ひな人形」を飾るイベントが今年で10年目を迎え、多くの人が訪れています。これまでに地元市民や全国から寄せられた人形は合わせて6000体に上り、隣接の施設にも収容。江戸期から昭和以降までの人形の展示ではそれぞれの時代の世相もうかがえるのが魅力です。同館は現在人形の寄贈は断っていますが、いまだに問い合わせがあり、ひな祭りに向けて忙しい日々が続きそうです。

市民から寄せられた人形が増え

[写真]6メートルの高さの1000体のひな人形

 同館は以前から職員らが世界の人形と併せひな人形を展示してきましたが、市民らが寄せる人形が数を増し、10年前から「三十段飾り千体のひな祭り」と銘打って展示。地域の名物イベントになってきました。千体のひな祭りは高さ6メートルもあり、訪れた人はその迫力に驚きます。

 ほかに江戸期の享保ひなや大正期以降の御殿ひな、現在のひな人形に近い古今ひななども含め多彩な展示。6000余のひな人形の展示は全国でも最大規模とされています。同館によると来場者は中高年の夫婦が目立ち、親子3代そろっての来場も。

顔立ちや衣服に時代ごとの変化

[写真]享保のひな人形を説明する廣田学芸員

 博物館の廣田華子学芸員によると、江戸時代享保年間に流行した享保ひなは、女ひな(めびな)の朱色のはかまを大きく膨らませたのが特徴。顔立ちはほっそりした卵形で穏やかな表情です。今回展示の人形は一体の幅が50センチ以上、高さ50センチと大きく、来場者の目を引いています。また、古今ひなは女ひなの刺しゅうが豪華です。

 人形のデザインなどは時代とともに変わり、廣田学芸員によると昭和初期には7段飾りが流行したため人形は小さめになり、戦後の高度成長期には大きくなりました。その後、住宅事情や団地サイズの要請もあってサイズは小さくなっていったとのことです。

絵本にちなんだ人形が人気

[写真]世界の民俗人形博物館(長野県須坂市)

 展示で来場者の注目を集めているのは6段飾りの「はこちゃんのおひなさま」。児童文学者の丸田かね子さんの同名の絵本(銀の鈴社発行)にちなんで、作者の丸田さんが人形博物館に寄贈した自分のひな人形です。

 「はこちゃんのおひなさま」は、戦時中に地方に疎開したはこちゃんと呼ばれる少女の母親が疎開先で亡くなり、少女は年老いるまでひな人形のひしゃくを持った官女に母親の面影を追い続けます。しかし、思い立ってひな人形を須坂の人形博物館に寄贈し、悲惨な戦争への思いを伝えていくという物語です。寄贈されたのは作者の体験を反映したひな人形とされ、絵本も会場に用意されました。 

 世界の民俗人形博物館は元文化服装学院学院長で須坂市出身の小池千枝さんから寄贈を受けた世界100余か国の民俗人形約3000体を所蔵、公開しています。ひな人形の展示は4月17日までで、その後五月人形を6月まで展示します。

(高越良一/ライター)