ガンバの新しいホーム 吹田サッカースタジアム(写真:フォトレイド/アフロ)

 日本サッカー界に新たな聖地が生まれた。ホームサイドのゴール裏のスタンドが、一体となって圧倒的な臨場感を醸成。声の塊を屋根に反響させてピッチへ降り注がせ、味方を鼓舞し対戦相手を威圧する。

 ガンバ大阪の新本拠地となる、4万人収容のサッカー専用「市立吹田サッカースタジアム」は、構造が左右対称ではない点で日本サッカー界では稀有な空間を作り出している。3層で構成されるスタンドのうち2層部分に設けられたVIPエリアが、メインスタンドから見て左側、ホームのゴール裏にだけ存在しないからだ。

当初の設計では、すべての2層部分がVIPエリアとなっていた。ガンバの野呂輝久社長が振り返る。

「2012年3月にサポーターと打ち合わせをした際に『ここだけは譲れない』と要望されたのが、ホームのゴール裏で一体になって応援したいということでした。なので、ここだけVIPエリアを外しました」

 アウェー側のゴール裏は、1層部分と3層部分がVIPエリアで分断されている。翻ってガンバ側のゴール裏は3層からなるスタンドが折り重なるようにそびえ、急傾斜のスロープを作り出している。
 
 加えて、ゴール裏のフェンスとゴールラインまでの距離は10m。メイン及びバックスタンドのフェンスとタッチラインまでに至ってはわずか7mで、1.5mのフェンスの高さを含めて、いずれもFIFAが定める基準の下限となっている。サポーターの要望も受け入れられたことで、ガンバのゴール裏だけで収容人員の4分の1となる1万人を収容できる壮観な光景を実現させた。万博記念競技場のゴール裏の収容人員は約2000人だった。3万5271人で埋まった14日の名古屋グランパスとの「こけら落とし」へ東京から駆けつけた、50歳の男性サポーターは万博との違いに声を弾ませた。

「ゴール裏のかなり上のほうで観戦していました。スキー場のコースにたとえれば、中上級者向けの傾斜となるでしょうか。それでもピッチが近く感じましたし、屋根があるから雨の日はありがたいですよね」

 FW宇佐美貴史も「見ている人が感じていることを、僕らもピッチのなかで感じていた。これだけ近いと、サポーターの声はダイレクトに入ってくるので」と笑顔を浮かべる、

 国内のスタジアムの大半を占める行政主導で建設されたスタジアムでは、こうはいかない。たとえば日本最大の収容人員を誇る日産スタジアムは、観戦面でワーストに位置づけられてしまう。それだけにクラブ主導で建設された市立吹田サッカースタジアムは、日本サッカー界に新しい道筋をつけた点でも画期的となる。