世界アンチ・ドーピング機構は厳格な検査と行動監視を行っている(写真:ロイター/アフロ)

 覚せい剤所持の容疑で逮捕された清原和博容疑者が、巨人時代から覚せい剤に手を染めていたのではないか、という情報が錯綜している。元巨人投手がメディアを通じて語っている一方通行の証言だけで、その真相は不明だが、たとえ現役時代に使用していなかったとしても、野球界が再発防止に向けて早急に対処すべき問題は多々ある。そのひとつが、現在、NPBが実施しているドーピング検査で、選手の覚せい剤使用を見つけることができるのか、防止できるのか、という機構サイドの抱えている問題だ。

 メジャーリーグで2003年からステロイド使用が大問題となった影響を受けて、NPBは2006年にアンチ・ドーピングの啓蒙期間として罰則なしのドーピング検査を初導入した。筋肉増強剤(ステロイド系)、興奮剤(アンフェタミン系、覚せい剤など)の使用をチェックするもので、2007年以降に本格導入し、毎年、アンチ・ドーピングガイドを掲げてドーピング検査を実施、結果を公表している。

 NPBのドーピング検査は、1軍の試合を対象に抜き打ちで行われ、試合の5回終了後に両チームのベンチ入りメンバー全員でくじ引きを行い、各チーム2人ずつの尿を試合後にNPBの関係者立会いの元で採取し、専門機関の分析にまわす。本人の尿であることを直接確認する作業などが必要のため、最近では各球場にドーピング検査用の施設まで完備されるようになっている。もちろん、覚醒剤を使用していた場合、検査によって陽性反応が出るようになっている。もし、検査で異常が発覚した選手は、NPB医事委員会の報告の後に、NPBアンチ・ドーピング調査裁定委員会で審議され、各種の出場停止、罰金処分などが課させれる。過去には、治療のための薬で陽性反応が出た一人のセ・リーグの野手と3人の外国人選手がドーピング違反による制裁を受けている。

 清原容疑者が巨人に在籍していた1997年から2005年までのあいだにはドーピング検査は実施されていなかった。だが今後、球界におけるこのような問題の再発を防止するためには、現状の検査体制のままでは不備があるとしか言えない。

 NPBが実施しているドーピングの検体は、年間100人程度、試合数で言えば、抜き打ち検査に入るのは、年間25試合から30試合程度しか対象としていないため、例えクロの選手がいたとしても、検査対象に当たる可能性は極めて低い。

 元千葉ロッテの里崎智也氏からは、「五輪では大会前に全員がドーピング検査を受けた。WBCや五輪の大会中も、厳しくドーピング検査を複数回受けたが、NPBの検査がくじで当たったのは、引退するまで確か一度だけだった」という体験談を教えてもらったが、年間4000人前後の選手を対象にして行われているメジャーリーグの検査などに比べると、NPBのそれはいかにも手ぬるい。