【連載・色川冬馬の世界の野球】
2015年から、野球のパキスタン代表監督を日本人の色川冬馬さん(26)が務めている。選手としてアメリカの独立リーグやプエルトリコ、メキシコのリーグでプレーし、その後代表監督としてイラン、パキスタンを指揮した色川さん。これまでの経験を通じて世界各地の野球文化や事情を紹介するとともに、日本野球のあるべき姿を探っていく。


 
 今年2月2日から一週間、政府が推進するスポーツによる国際貢献事業「スポーツ・フォー・トゥモロー」のプロジェクトの一員として、アジア最貧国と言われるネパールを訪れた。目的は、野球の指導者として各学校を回り、ジュニアからユース世代の子どもたちに野球を教えることだった。この連載はアメリカでの選手時代を振り返る「アメリカ編」の途中だが、今回は特別に、そんなネパールでの日々をお伝えしたい。

野球を通じて笑顔を届けたい

ネパールの学校をめぐり、子どもたちに野球を教えた色川さん

 今回の渡航は、「ネパール野球ラリグラスの会」の小林洋平理事長から声をかけていただいたことがきっかけだった。小林理事長とは2年ほど前に私がイランで野球を指導している時に出会い、以後西アジア野球発展のため、情報交換を続け協力関係を築いてきた。西アジア地域の野球情勢は、パキスタンが圧倒的な実力で独走し、実力が拮抗するイランとインドが続く。そしてその下に位置し、野球の普及・強化が必要な国が、ネパール、イラク、アフガニスタンといった国々だと私は思っている。

 今回は一週間という短い期間ではあったが、田舎町の学校から首都カトマンズの大きな学校まで回ってきた。限られた時間と環境、そして人数の中、野球というスポーツを知ってもらいたいという情熱を持った人々が集まった。野球を通じて、ネパールの人々に新たな楽しみや笑顔を届けたいという思いで活動を続けた。

復興途上でガソリンが止まった国

ガソリンスタンドの前に、空っぽのバスの列が続いていた

 2月2日、現地の空港へ到着した。ホテルまでの道中、路上に誰も乗っていないバスの列が続いていた。現地の人の話によると、インドとの国境が封鎖されガソリンの供給が止まったため、給油を待つバスがガソリンスタンドの前に置き去りにされ、徐々に増えていったそうだ(2月6日、135日ぶりに国境は開かれた)。