復活を目指すソフトバンクの松坂大輔(35)が今キャンプから新しい投法にチャレンジしている。踏み出す左足を大きくまるで円を描くように旋廻させ、その下半身で生まれた遠心力を利用して、上半身を引っ張り球持ちを良くして球威を増大させようという新しい試みだ。
まるで剣術の世界のような円心投法である。出来る限り下半身で投球をリードすることで、肩、肘への負担を軽減させたいという目的もあるという。
 
 復活の軌跡を見守っている佐藤義則投手コーチが言う。
「左足の使い方を変えている。左で円を描くように、ゆっくりとステップすることで、遠心力を生み出す。それと同時に下半身の粘りを作りたい。まだストンと落ちてしまっているからね、もっとゆっくりと。その部分は本人もまだ満足はしていない」
 
 プレッシャーのかかった凱旋初年度は、右肩痛に悩まされ、ついに手術を敢行した。オフから時間をかけて苦しいリハビリに臨み、ブルペンには初日から入ったが、復活を迎えるにあたって、ニュー松坂へと変身を遂げようと新しいフォームにチャレンジしているのだ。 

 16日には、フリー打撃に登板。昨年5月20日のウエスタンの対オリックス戦以来、実に272日ぶりに打者と対戦した。変化球も交えた本番さならがらのピッチング内容で、その後も報道陣をシャットアウトしてフリーと合わせて合計100球以上の投げ込みを行い、ハイピッチで臨戦態勢を整えている。

「今の形の方がスムーズに感じる。どの球種でも、ストライクが取れたことが良かった。すぐにでもゲームに投げることができる」
 松坂本人も確かな手ごたえを感じ取っている。

 佐藤投手コーチも、「コントロールが抜群。特に変化球。カット、カーブ、チェンジアップにシュートまで、ほとんどぶれがない。さすがだ」と絶賛している。
   

 松坂の年齢と怪我を考えると、往来の球威とキレだけで抑えにかかるスタイルからは脱皮しなければならない。コントロール重視をイメージしながらも、肩、肘に負担をかけずに球威をキープする投法を模索しているわけである。

 ソフトバンクを主にカバーしている評論家の池田親興氏も、「上半身に力が入るのが気になっていただけに下半身主導で球持ちを考えるフォーム修正は、いい方向だと思う。下半身の使い方を変えると、上半身の可動域という部分にまで、いい影響を及ぼす。シーズン中も続けて、そのフォームを維持するつもりかどうかもわからないが、まだ手術から間隔もあいていないのだから、今後は、疲労の回復などの様子も見ていかねばならないと思う。いずれにしろ、これまでとは違う2016年スタイルの松坂に期待している」と、新フォームへの取り組みを評価している。

 連日のように松坂の明るいニュースが届けられているが、松坂は5番手、6番手のローテーション争いに参戦している状況。バンデンハーク、武田翔太、攝津正、中田堅一と、実績のある先発投手が4人までは、ほぼ確定。5番目、6番目の椅子を今季米国から復帰した同級生の和田毅、千賀滉大、寺原隼人、大隣憲司らと争うことになる。言えば十分にコマは足りている状況で、工藤監督も、「手術をしてからまだ半年。無理はさせたくない。開幕に遅れてもかまわない。これは本人に言ってある」と言う。
 
 松坂自身は、開幕からローテーションに入る気で調整を進めているが、チームとしては5月でも6月でも、松坂が万全となった状況で合流してくれればという考え。円心投法が、その工藤構想をいい意味で狂わせることになれば、ますますソフトバンクは手がつけられなくなりそうだ。

(文責・駒沢悟/スポーツライター)