前回は、日銀の中に金融機関が開設した当座預金にお金が滞留し、市中に出回っていないという話をしました。これを市中に出回らせるための措置がマイナス金利です。

3段階の金利を設定する「階層構造方式」。すべての預金がマイナス金利の適用対象になるわけではない

 日銀が量的緩和策によって金融機関から国債を購入した代金は、とりあえず当座預金に振り込まれます。銀行は健全性を担保するため、預金額の一定割合を当座預金に預けることが義務付けられており(法定準備金)、この分について金利は発生しません。しかし、これを超えて当座預金に預けたお金については、日銀は0.1%の金利を付与しています。

 量的緩和策は、市場にインフレ期待を醸成させ、実質金利を低下させることで、銀行の融資拡大を狙うという政策ですが、現実問題として国内には目立った融資先がありません。このため銀行は、当座預金にお金を眠らせたまま、ほとんど活用していない状態になっているのです(いわゆるブタ積み)。

 先ほど説明したように、当座預金については、法定準備金を超える部分について0.1%の金利が付与されるため、銀行はわざわざこれを引き出して運用しようとしません。このため、日銀がいくら国債を追加購入しても、市中にマネーが出回らないという状態が続いていたわけです。

 マイナス金利は、これを見直し、法定準備金の超過分の一定割合についてマイナス0.1%の金利を適用するというものです。いってみれば手数料を徴収するようなものですから、銀行は日銀にお金を預けていると損をしてしまいます。具体的には現在の残高から、2015年における平均残高と法定準備金、さらに日銀が任意に設定する金額(マクロ加算残高)を差し引いた金額(政策金利残高)についてマイナス0.1%の金利を徴収します。

 現在、銀行は当座預金に約230兆円を預金していますが、マクロ加算残高がない場合でも、実際にマイナス金利が適用されるのは18兆円程度にしかなりません。今のところはマイナス金利になる金額はゼロ円ですが、今後、日銀があらたに購入する国債の代金分からはマイナス金利が適用されていきます。

 このように、段階的にマイナス金利を適用するのは、銀行の経営を圧迫する可能性があるからです。当座預金全体にマイナス金利を適用してしまうと、銀行には約2200億円もの損失が発生することになり、銀行株が暴落してしまいます。このため、マイナス金利は部分的な適用にとどめ、状況を見て範囲を拡大したり、金利のマイナス幅を増やすことになります。ただ、銀行の経営に影響を与えない程度ということになると、マイナス金利が適用できる範囲も限定的となるでしょう。

(The Capital Tribune Japan)