政府は国家戦略特区において、国家公務員の社員への採用を促す措置について検討しています。現行制度では国家公務員が一度退職して民間企業に就職すると、再び官庁に戻った場合の退職手当が大きく目減りしてしまいます。手当が減らないような特例を講じ、企業の人材確保を後押しするとのことですが、本当にこのような政策が必要なのでしょうか。

 このプランが浮上しているのは、政府が主催する国家戦略特別区域諮問会議です。地方都市では、首都圏などへの人材流出が激しく、優秀な人材を確保できないという問題が発生しているそうです。このため国家公務員を創業5年以内の民間企業に採用させる方策が検討されてきました。

 しかし、現行の法律では、公務員を辞め、民間企業で働いた人が再び公務員に戻った場合、戻った時点からの勤続年数が退職手当の基準となってしまいます。このため、公務員の人は、仮に公務員に戻れる保証があっても、なかなか民間企業には転出しません。

 福岡市で進められている「グローバル創業・雇用創出特区」では、特例措置を実施し、公務員として働いた通算の期間を退職手当の算定基準とします。退職手当の支給額を目減りしにくくすることで公務員の民間転出を狙います。

 公務員として働いた期間を通算して退職金の算定基準にするという改正そのものは、極めて妥当な内容といってよいでしょう。公務員に戻った後から退職金が算定されるという現行基準の方が間違っているのは明らかです。

ベンチャー企業に公務員? 地方はそんなに人材難なのか?

 しかし、地方創生のためにこうしたプランが必要なのかはまた別の問題でしょう。制度の背景には、官の人材を使って、民の事業を活性化させるという考え方が存在しているわけですが、本来であれば、公務員に求められるスキルと、民間企業に求められるスキルは異なっているはずです。

 今回、支援の対象となるのは創業5年以内の企業ということですから、ベンチャー企業も数多く含まれているでしょう。実際、石破地方創生相も「ベンチャー支援」であると明言しています。一般的に考えて、公務員としてのスキルを持った人が、ベンチャービジネスで卓越した成果を上げることは極めて困難です。

 もしそれが実現できるということであれば、それは革新的なベンチャービジネスではありませんから、公務員を再就職させてまで、こうした企業を支援する必要があるのか疑問視する声が出てくることになるかもしれません。

 公務員のスキルや経験しかない人でも、採用せざるを得ないほど人材が枯渇しているのであれば、この人材難を解消することの方がはるかに重要ということになります。もっとも、地方の現場では理想論など言っていられないという現実もあるようです。政策の優先順位について、議論を深めることが重要でしょう。

(The Capital Tribune Japan)