使い込まれた『記者ハンドブック』の第12版(右)。左は同9版

 新聞には、記事の書き方や言葉の使い方について、詳細な“マニュアル”がある。新聞の場合、内閣が告示した「常用漢字表」をもとにした「新聞常用漢字表」を日本新聞協会の新聞用語懇談会がまとめ、それをもとに全国紙や通信社がマニュアルをつくっている。『朝日新聞の用語の手引』(朝日新聞出版)のように、一般に発売されているものもあり、現在、もっとも多くの新聞社で使われているのは、共同通信社の『記者ハンドブック』だ。1956年に初版が発行され、3月下旬に改訂版の第13版が発売される。

『記者ハンドブック』誰が使う?

 共同通信社は、地方紙などにニュース記事を配信する会社である。同社の配信した記事は多くの地方紙・ブロック紙などに掲載される。東京周辺や大阪周辺で暮らしている人はあまり目にしないものの、地方で暮らしている人の多くは、地方紙を通じて共同通信配信の記事を目にしている。それゆえに共同通信の『記者ハンドブック』は、多くの人が目にする日本語の基準となり、共同通信とは関係のない業界紙や出版社、フリーの校正者などもよく使用している。

交ぜ書きか、言いかえか

共同通信社編集局用語委員会の成川祐一さん

 「昔は交ぜ書きが多かったのです」と、共同通信社編集局用語委員会の成川祐一さんはいう。たとえば1988年の『記者ハンドブック』では、「混沌」は「混とん」と交ぜ書きにしていた。現在発売されている版では、「混迷」と言いかえたり、「混沌(こんとん)」とルビをふるようにしたりしている。
 
 「スポーツ選手は、難しいけどよく耳にする表現をしますね。そういったものを言いかえることで、わかりにくくしているということは考えます」と成川さんはいう。例えば「渾身」はこれまで、「満身」「全身」「あらん限り」と言いかえてきた。こういった表現も、「渾身(こんしん)」とルビをふるのでもいいのではというのが、成川さんの意見だ。

 そういったものを変える、というのが今回の『記者ハンドブック』改訂の大きなポイントだ。成川さん自身、ずっと用字用語の部署にいたわけではなく、外国特派員などの取材部門にいたこともあり、実際に記事を書く人間としての考え方を、今回の改定に活かそうとしている。