2015年から、野球のパキスタン代表監督を日本人の色川冬馬さん(26)が務めている。選手としてアメリカの独立リーグやプエルトリコ、メキシコのリーグでプレーし、その後代表監督としてイラン、パキスタンを指揮した色川さん。これまでの経験を通じて世界各地の野球文化や事情を紹介するとともに、日本野球のあるべき姿を探っていく。

 この連載は「アメリカ編」の途中だが、前回と今回の2回は特別に、今年2月2日から1週間、政府が推進するスポーツによる国際貢献事業「スポーツ・フォー・トゥモロー」のプロジェクトの一員としてネパールで野球を教えた日々の様子をお伝えする。

気さくなネパールの人々

ネパールの被災地や貧しい村では厳しい生活環境が続く

 各学校を訪問する合間に、現地の被災地や貧しい村を訪れた。ネパールの人々は「ナマステ〜」と明るく挨拶してくれ、気さくな人柄の人が多い。私たちの訪問にもオープンに振舞ってくれる人が多く、同じ西アジア地域でも、イランやパキスタンとの違いを感じた。

 ネパールでは舗装されていない道路が多く、晴れていれば砂ぼこりが舞い、雨が降れば水たまりができ、歩きにくい場所が多かった。私が立ち寄った村でも、プライベートな空間はあるものの、人々が身を寄せ合い生活し、洗濯やシャワーなどを外で行っている姿が印象的だった。川は汚れ、異臭がする場所もあり、本当に厳しい環境もあった。

「ペン持ってる?勉強がしたいの」

学校へ向かう2人の女の子が「ペン持ってる?勉強がしたいの」と尋ねてきた

 ある村を散歩していると、トタンでできた家々から、子どもたちが「ナマステ〜」と次々に出てくる。学校へ通う前の幼い子から、これから学校に行く子どもたちまでさまざまだ。学校へ向かう2人の女の子が「ペン持ってる?勉強がしたいの」と尋ねてきた。私がバッグに入っていたペンを取り出して彼女に渡すと、うれしそうに学校へ向かった。

 ペンを必要とする子どもに初めて出会い、私自身のペンへの思いは変わった。あのときの会話に、お互いが不快な思いをするような、不自然な点はなかった。しかし、子どもの言葉すら疑い、警戒しながら会話をしていた自分を情けなく感じた。彼女たちの純粋な思いや笑顔は、私が忘れかけていた「モノの大切さ」を改めて教えてくれた。