効果的に機能していないようにみえた宮間(写真:長田洋平/アフロスポーツ)

 アディショナルタイムを含めれば、試合時間はまだ15分近く残っていた。それでも、決して少なくない数のファンが席を立ち、吹きつける冷風に背中を丸めながら家路を急いでいく。

 オーストラリア女子代表が、リードを再び2点差とする3点目を奪ったのが後半33分。その直後のキンチョウスタジアムの光景が、ピッチから感じさせる可能性がほぼ皆無だったことを物語っていた。

 2月29日に大阪を舞台に幕を開けた、リオ五輪アジア最終予選。4大会連続の五輪出場を目指すなでしこジャパンが、いきなり崖っぷちに立たされた。参加6ヶ国が10日間の強行日程で総当たりのリーグ戦を行い、上位の2ヶ国だけが五輪切符を手にできる狭き門。昨夏のW杯カナダ大会準々決勝で辛勝したオーストラリアに、1対3の完敗を喫したなでしこは、まさかの5位発進を強いられた。

 試合後の公式会見。ひな壇で「まさに歴史的勝利だ」と興奮冷めやらないオーストラリアのアレン・スタジッチ監督が、注目すべき言葉を残している。

「今日は日本チームのリズムを崩すことに集中した。それがすごく上手くいった」

 1ヶ月ほど前から日本戦に照準を絞り、パスワークに対してプレッシャーをかけ続けるべく、入念な対策を積んできたという。日本がどのような布陣を組んでくるのかを、完璧に把握していなければできない準備と言っていい。日本の先発は、準優勝した昨夏のW杯メンバーが10人。そのうち8人が、5年前に世界一の座を勝ち取ってもいるが、ほとんど代わり映えしていないうえに、長くチームの大黒柱を担ってきた澤穂希さんが昨年末に引退。カナダの地で澤さんをベンチに追いやり、ボランチで奮闘した宇津木瑠美(モンペリエ)もコンディション不良で今大会には招集されていない。

 3点目を失う直前のシーン。パスを受けたボランチの宮間あや(岡山湯郷Belle)が相手の執拗なプレッシャーにさらされた。前を向くことができないばかりか、挙げ句はボールを失ってカウンターを招く。
 両足から放たれる正確無比なキックを武器に、プレッシャーのない状況では宮間は無類のテクニックを発揮する。その際の主戦場は、背後からは敵が襲ってこない左タッチライン際がメインだった。
 だが、ボランチのポジションに入ったときは、常に相手の標的となるがゆえになかなか上手く機能しない。そのリスクを承知で佐々木則夫監督が「ボランチ・宮間」を選択することは、敵将に見抜かれていた。