ニホンウナギの稚魚であるシラスウナギの不漁が続いている。いまから6年前の2010年4月には、独立行政法人「水産総合研究センター」が、ウナギの完全養殖の実験に成功したと発表。「天然資源に依存しないウナギの生産に道を開く」のだと、この成果を「悲願」とまで表現していたのだが、いまだ完全養殖ウナギは市場に出回っていない。実用化に向けた研究は今、どこまで進んでいるのだろうか?

時間がかかるウナギ完全養殖の研究

完全養殖シラスウナギ(提供:国立研究開発法人水産総合研究センター)

 「完全養殖」とは、(1)受精卵を人工的にふ化、(2)仔魚(しぎょ)から稚魚のシラスウナギを経て、成魚のウナギに育成、(3)オスとメスから精子と卵を採取して人工授精、(4)ふたたび受精卵を人工的にふ化、というサイクルを人工飼育で完結させることを意味する。

 現在のウナギ養殖は、天然のシラスウナギを捕獲して養殖場で育てているので、完全養殖ではない。したがって、シラスウナギの漁獲量が減ってしまうと、市場に十分な量を供給できず、ウナギの価格も高くなってしまう。

 同センターの資料によると、日本ではかつて年間漁獲量が200トンを超える年もあったシラスウナギだが、1960年代以降より減少、1987年〜2011年は5〜27トンで推移している。もし、完全養殖が実現すれば、不安定な天然資源に頼ることなく、いまよりも養殖ウナギを安定的かつ安価に供給できる可能性がある。6年前、ウナギ完全養殖の研究成果が注目された背景には、そうした期待感があった。

 しかし現在、完全養殖のウナギはまだ市場にでまわっていない。一体、どうなっているのだろうか。同センター増養殖研究所資源生産部の桑田博部長は、こう説明する。「6年も経っているのに何をしているのか、とお叱りを受けることもあるが、ウナギの研究は結果が得られるまで時間がかかるのです」。

 同研究所では、シラスウナギを大量に育てる技術の研究に取り組んでいるが、桑田部長によると、ウナギは卵から稚魚に育つまで半年から1年半もかかる。ちなみに、すでに養殖技術が確立されているマダイだと、卵のふ化から大体1〜2か月で稚魚に育つという。