青少年を守る自主的な県民運動から一転、淫行処罰条例の制定に乗り出した長野県で、県議会の賛否の論議が活発化しています。最大会派の自民党内にも批判・慎重論があるなど、50年余の歴史を持つ「県民運動方式」見直しの波紋は予想以上の広がり。条例制定を急ぐ阿部守一知事に対し「県民運動は何だったのか、きちんと総括するのが先決ではないか」といった声も出ており、賛成論と併せて長野県にとっては歴史的な論争になろうとしています。

【写真】唯一の非条例県 長野県が「淫行条例」制定にかじを切った背景とは

真面目な恋愛も摘発される?

[写真]淫行処罰条例が論議を呼んだ長野県議会

 県民運動方式は、有害図書への規制などが論議になった1960年代に当時の西沢権一郎知事が「条例によらず、県民運動で取り組む」との方針を示し、その後、吉村午良、田中康夫各氏ら歴代知事が踏襲してきました。知事を会長に据えた長野県青少年育成県民会議の場合は1970(昭和45)年に発足。青少年団体、行政、業界団体、教育機関など100以上の団体、個人が市町村にまで広げた組織で非行防止やあいさつ運動などに取り組んできました。淫行処罰条例によらないこうした青少年対策は全国で長野県だけとなり、地域で取り組む県民運動方式は長野県の誇りともされてきました。

 ここへ来て青少年を性被害などから守るために罰則付きの条例制定が浮上したのは、県側の主張によると、インターネットの普及などによる社会状況の変化や性被害の増加があるため。阿部知事は2月定例県議会の一般質問で「条例化は、さらに県民運動や性教育の充実に取り組んだ上で検討すべきではないか」との議員の質問に「青少年育成の関係者から県民運動に限界があることや条例と県民運動を両輪として取り組むべきだとの報告も出されている」と条例化の妥当性を強調しました。

 県側が議会に示した条例の骨子案で特に論議になっているのは、大人は18歳未満の子どもに対し「威迫し、欺きもしくは困惑させ、またはその困惑に乗じて、性行為やわいせつな行為を行ってはならない」とし、2年以下の懲役または100万円以下の罰金を科すとの部分です。「困惑の定義が不明確で、まじめな恋愛まで摘発されて冤罪になるおそれがある」などの懸念が出ています。