AI(人工知能)を使ってスポーツで勝つ時代が来るのだろうか。電気通信大学情報・通信工学科の伊藤毅志助教研究室が、最適な戦い方をAIが提案してくれるカーリング戦略支援システムの開発を進めている。研究はどの段階まで進んでいるのか。将来はどのような分野に応用可能なのだろうか。

AI同士の対戦結果から「勝てる戦略」を蓄積

電気通信大学情報・通信工学科の伊藤毅志助教

 「『氷上のチェス』とも言われるカーリングは、2つのチームが交互に石(ストーン)を投げ合う点や、相手の手の先読みが必要な点で、将棋に似ています。一方で、互いに100%狙ったところへ投げられるとは限らないなどの『不確定要素』も含まれる点が特徴です」と伊藤助教は説明する。

 伊藤助教は、これまで将棋や囲碁といった思考ゲームを題材に、AIの研究を進めてきた。数年前からは、新たにAIを用いたスポーツ戦略支援システムの研究にも着手しており、最初のテーマとして、将棋に似た特徴を持つカーリングを選んだ。

 「モニタ上に相手と自分たちの石がモニタ上に再現され、次の放つべきショットを試合の局面に応じて提案してくれる」ようなシステムの完成が理想だが、今はまだ、その域まで達していない。

 現在は、AI同士がカーリングを戦うソフト「デジタルカーリング」を通じ、さまざまなAIの対戦結果から優れた戦略の情報を蓄積する段階。ゆくゆくは、試合会場における石の曲がりやすさや、試合が進むにつれ刻々と変化する氷のコンディション、各選手の得意・不得意ショットなど、さまざまな不確定要素を盛り込んで、戦略提案の精度を高めて「強いシステム」を作る方針だ。

 伊藤助教は、手堅い戦略を予測するシステムや、一発逆転型のシナリオを好むシステムなど、「強いシステム」が複数パターン登場する可能性もありうると見る。たとえば、AシステムはBシステムに強いがCシステムには弱い、Dシステムは勝率こそ低いが他のシステムが苦戦するEシステムに強いなど、相性によって得手不得手が現れるかもしれない。もしそうなれば、チームにいる選手の能力次第で、異なるシステムを選択することも可能になるだろう。