【図1】南シナ海で米軍鑑定の周囲を航行する中国軍艦艇

 「中国は明らかに南シナ海を軍事拠点化している」。米軍において南シナ海を担当しているハリー・ハリス太平洋軍司令官は、2016年2月、米国議会の公聴会でそう証言しました。

 南シナ海において急速に岩礁を埋立て、次々に飛行場を建設し、ミサイルまで配備した中国の動きに、米国は警戒心を強めています。その米国が最近南シナ海で活発化させている活動が、「航行の自由作戦」(Freedom of Navigation Operation。以下、FONOP)です。FONOPは、沿岸国による過剰な海洋権益の主張に対抗するために、米軍が世界各地で35年以上前から行っている活動です。同作戦の主な目的は、国際法上、すべての国に保障されている「海」と「空」の利用に関する権利などを保護することです。ただし、この作戦には、米軍の活動の自由度を確保しようとする意図も込められています。

世界各地で35年以上も続く活動

【図2】「航行の自由作戦」の対象国(2012米予算年度)

 「航行の自由作戦」(FONOP)は、沿岸国による過剰な海洋権益の主張に対抗するために、全世界において米軍が行っている活動です。「沿岸国」には、米国の同盟国や友好国も含まれており、日本も作戦の対象になったことがあります(図2参照)。

 また、活動の主体である「米軍」には、米沿岸警備隊も含まれています。FONOPは、1979年に始まった米国の国務省と国防省が行う「航行の自由プログラム」の一環として行われています。同プログラムの活動内容は、外交官による協議から、米軍が行うFONOPに至るまで多岐にわたります。FONOPは国際法に基づいて行われるため、沿岸国が国際法に合致しない独自のルールを定めている場合、米軍は従いません。例えば、中国は自国の領海内に入る外国軍艦に対して事前許可を得るよう要求していますが、米軍は事前許可を得ることなく、国際法にのっとり、中国の領海内を航行しています。

「海」だけではなく「空」も対象

【図3】南シナ海で活動中の米軍機に対する中国海軍の警告

 「航行の自由作戦」(FONOP)の主たる目的は、国際法上、すべての国が保障されている「海」と「空」の利用に関する権利などを保護することです。作戦名にある「航行(navigation)」には、「海」における航行だけではなく、「空」における飛行の自由も念頭に置かれています。

 飛行の自由を脅かす行為としては、国際法で認められている、公海や排他的経済水域(EEZ)の上空における飛行を制限する行為などが挙げられます。中国は実際に、こうした行為を試みています。米国は中国の過剰な主張に対抗するために、南シナ海の空域に爆撃機や哨戒機を派遣しています。

 米国のメディアであるCNNが2015年5月20日に配信した映像からは、中国軍が米軍機に対して国際法に合致しない類の警告を発していることが確認できます(図3参照)。米軍は海と空における「航行の自由」を確保するために、軍艦だけではなく、様々な手段を投入しています。