実は昔から「とめはねはらい」は気にしなくてよかった

 つまり、従来から「木」の棒ははねてもよかったのだ。では、学校での「とめはねはらい」の指導は何だったのか。

 小学校では、学習指導要領の「学年別漢字配当表」 に示された字形を標準として指導することが定められているが、「『標準』とは、字体に対する手がかりを示すものであり、これ以外を誤りとするものではない」とされている。文化庁の担当者は、「学習指導要領では、こう定められていますが、実際どう運用するかは、個々の教師に委ねられます」と話す。今回の報告でも、教育現場で、多様な字形が認められるという考え方そのものが十分に広がっておらず、「その内容が知られないまま細部の差異に注目した評価が行われる場合がある」と指摘している。

教科書に載っている漢字の形も一つではない

 文化庁国語課の担当者は、学校における漢字指導について、興味深い話を教えてくれた。「実は、教科書に載っている漢字の形も、一様ではないのです」。例えば、代表的な国語の教科書5社を比較すると、「右」という漢字の「口」が「ナ」にくっついているのが4社、付いていないのが1社。「貝」という漢字の下の「ハ」が、「目」にくっついているのが1社、付いていないのが4社あるという。

 「教科書にすら違いがあるのに、そのような小さな差異に基づいて正誤が分かれるという指導は、ナンセンスだと思いませんか。それでは、別の町に引っ越したら合っていた回答が間違いになってしまいます。今回の報告では、そのようなことが無いようにしたかった」と、同庁担当者。もちろん、「士」や「土」、「未」や「末」のように字の形によって、漢字そのものが変わってしまうものは、引き続き字の形を気をつけなければならないと付け加えた。

 今回の報告のQ&Aに次のような質問がある。「Q23 正しい字形をきっちりと教えるべきではないかー漢字は正しい字形をきっちりと教える必要があると思います。そのような考えは間違っているでしょうか」。それに対し、このように回答している。「A.漢字には一つだけの正しい形があるわけではありません。そのことを踏まえた上で、より整った読みやすい字を書こうとする気持ちは尊重されるべきです」

(中野宏一/THE EAST TIMES)

この記事が気に入ったら「いいね!」をお願いします