福澤桃介と親類。3列目の左から3番目が福澤桃介。2列目の右から2番目は妹の杉浦翠子。(『福澤桃介翁伝』、福澤桃介翁伝記編纂所、1939年、「實父紀一氏の法要(明治四十三年十一月十七日命日)」より)

 投資家として大活躍した福沢桃介の人生は、いよいよクライマックスを迎えます。実業家、事業家としても手腕をふるう桃介ですが、相変わらず行動や言動は多くの人の注意をひきます。財界で屈指のイケメンと知られた桃介の女性投資家や女流歌人との交流もまた、奔放に生きた桃介の魅力を物語ります。市場経済研究所の鍋島高明さんが解説します。 

   貿易でもうけた金はきれいで、株でもうけた金は汚い、は解せぬ

 福沢桃介は株で大もうけしたあとは実業家、事業家としての道を歩む。同時に多くの著作を世に問うが、最初に出すのが「桃介式」。先年、パンローリング社から復刻版が出たので入手しやすくなったが、その本には当代切ってのジャーナリスト三宅雪嶺(せつれい)が序文を寄せている。桃介は腹に一物もなく、あっけらかんとしているところがいいとし、こう述べている。

  「言うところ、すこぶる愉快である。キビキビしている。しみったれたことを言うが、普通のしみったれと違っている。愉快である。偽善めかぬところがよい。福沢諭吉先生から頭を下げるな、やせ我慢をせよといわれて、頭を下げず独立独行してもうけることに取かかったそうである。面白い」

 桃介は偽善家どころか、偽悪者めいている。「桃介式」の中で、森村財閥の祖森村市左右衛門と自分を比較しながら、こう述懐する。

投資家の美学