612日ぶりの復帰マウンドに立った岩瀬は見事に満塁のピンチを切り抜け、早くもストッパー昇格の声があがっている。写真・黒田史夫

 中日の岩瀬仁紀(41)が9日、ナゴヤドームで行われた巨人戦で、612日ぶりに実戦マウンドに復帰。0-0で迎えた8回一死満塁の大ピンチを併殺で切り抜けた。日本最多の通算402セーブを誇るレジェンド左腕に、チーム内では、早くもストッパー昇格のプランが出ている。

「ピッチャー!田島に代わりまして岩瀬!」と、コールされるとナゴヤドームの空気が一瞬にして変わった。
先発、吉見一起(31)の後を受けた田島慎二(26)はストライクが入らずに、まさかの3者連続四球で、8回一死満塁。しかも巨人は4番の新外国人、ギャレットである。崖っぷちの場面で、数々の修羅場をかいくぐってきた左腕は、2年ぶりの登板にもかかわらず「開き直った」という。

 それでもさすがに緊張したのか、初球のスライダーは大きくスッポ抜けた。「腕が振れていたし感覚をつかめた」。続けて135キロのストレートはファウル。カウント1-1から、伝家の宝刀スライダーは高めに浮いたが、ギャレットはひっかけた。4-6-3の併殺打。ゆっくりとベンチに歩いて帰る岩瀬は、途中、「よっしゃあ!」と声をあげてガッツポーズをとった。初めて対戦する左打者には、岩瀬の独特の変化をするスライダーへの対応は難しかったのだろう。

 たった3球のワンポイントだったが、谷繁監督は「さすが。すごい仕事をしてくれた」と絶賛した。
 8回のギャレットの打席での起用を事前に、岩瀬に伝えていたという。
 
 昨季は、左肘の故障で1試合も登板をしていない。オフに2億7000万円の大幅減俸。事実上の戦力外通告だったが、引退した山本昌から「おまえは辞めるな」と釘を刺された。オフから鳥取の初動負荷トレーニングを生み出した小山裕史氏の元を訪れ、フォーム改造に着手、同時に数種類の新球にも取り組み、沖縄キャンプでは初日からブルペンに入った。岩瀬がハイペースで調整を進める一方、新守護神として期待して獲得したハイメ(28)が、キャッチボールもできないほど大きく出遅れ(今だに2軍で調整不足)、首脳陣の間では岩瀬ストッパー案も出ていた。

 だが、途中、インフルエンザにかかったこともあって岩瀬は、開幕1軍メンバーからは漏れた。
 結局、開幕からは、福谷浩司(25)がストッパーに指名され、すでに4セーブを記録、防御率0.00と、パーフェクトな結果を残している。だが、今後の長いシーズンを考えると負担は減らしたいし、好不調の波も出てくるだろう。当面、岩瀬は左のワンポイント、もしくはセットアッパーの起用になるだろう。

 まだスライダーに本来のキレと制球力も戻っていないようだが、この日の豊富な経験を生かした円熟のピッチングをまざまざと見せられた首脳陣の間からは、「ある程度、良くなってくれば(岩瀬に)後ろを任せたい」という声まで出ている。
 戦前の予想を覆し好スタートをきっている中日に頼りになるベテラン左腕が戻ってきた。
   

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