[画像]『ハウス・オブ・カード 野望の階段』より

 デヴィッド・フィンチャー監督によるNetflixオリジナルドラマ『ハウス・オブ・カード 野望の階段』は、権謀術数をこらして副大統領、そして、大統領に上り詰めるフランシス・アンダーウッド下院議員(ケヴィン・スペイシー)を描いた名作ドラマだ。大統領がアメリカ政治の「最高権力者」であることは間違いないが、その大統領の地位や権限について、実は日本ではあまり正確に理解されているとは思えないことが多い。特に、大統領を“王様”にさせないという理念がアメリカ政治の根本にあることは、意外と見逃されがちである。この大統領の「強さと弱さ」とを知れば、このドラマでフランシスが大統領にのし上がった理由も明らかになる。(上智大学・前嶋和弘)

特別企画『ハウス・オブ・カード 野望の階段』

アメリカの“顔”としての大統領

[図]アメリカ大統領の主な権限

 日本や各国の人々にとって、アメリカの大統領は絶対的な権力者に見えるかもしれない。

 大統領は「国家元首(ヘッド・オブ・ステート)」であり、「主席外交官(チーフ・ディプロマット)」として外交の最高責任者であるほか、「三軍の司令官(コマンダー・イン・チーフ)」として、軍事上の最高者も兼ねている。諸外国との関係の中では、臨機応援に対応する役割が必要であり、その権限が大統領に与えられている。

 「アメリカの覇権」が確立した第二次大戦前後から、アメリカは世界の中心国家として、グローバルな範囲での積極的な関与を続けてきた。その外交の顔が大統領である。外国から見れば、「アメリカ」という言葉から最初に連想するのが、現職のオバマ大統領の顔かもしれない。

 アメリカ政治を長年大学で教えているが、学生にとっても、大統領はアメリカそのものだ。アメリカ政治の授業の初回で、毎年、それは「大統領にはどんな役割があるのか」と学生に聞く。そうすると、「日本政治とは違って何でも一人でできる人」という回答が必ず複数ある。

 ただ、アメリカ政治を少しでも学んだ人ならこの回答は根本的に間違っていることに気が付く。

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