[写真] 『ハウス・オブ・カード 野望の階段』より

 デヴィッド・フィンチャー監督によるNetflixオリジナルドラマ『ハウス・オブ・カード 野望の階段』では、アメリカ大統領に上り詰めたフランシス・アンダーウッド下院議員(ケヴィン・スペイシー)が、再選のために、相手候補を陥れようと様々な企みを続ける。その背景となっているのが、ライバル候補との激烈な戦いを長期にわたって続けていかなければならないという、アメリカの大統領選挙の特徴である。ドラマだけでなく、現実でも、大統領選挙は多士済々の他の候補者と抜きつ抜かれつの争いが展開される“マラソン”そのものだ。実際にどのような長い戦いが繰り広げられるのか、確認してみたい。(上智大学・前嶋和弘)

特別企画『ハウス・オブ・カード 野望の階段』

両党の候補を決める「予備選」段階

 大統領選挙の年には、「予備選」と「本選挙」という、選挙の仕組みも候補者の戦略も異なる2つの段階がある。ただ、予備選に向けた選挙運動はどんどん前倒しされる傾向がある。この“影の予備選”を合わせると、選挙戦は2年、あるいはそれ以上になるのが通常だ。立候補者はそれぞれに沿った戦略を進めなければならない。

[図] 米大統領選の流れ

 まず第1の段階は民主・共和両党の党としての候補者を決める「予備選段階」である。これは夏の全国党大会に送り込む代議員を獲得する争いであり、選挙年の2月ごろから順次開かれる各州の「党員集会」か「予備選」で、どの立候補者に代議員を割り振るかが決められていく。基本的に予備選は一斉に投票するのに対し、党員集会は地区ごとに開かれる集会で討議した上で、投票する形式だ。

 毎回7月か8月に開かれる全国党大会で 代議員数の過半数を獲得した場合、その政党の代表となる。

党の候補者同士が戦う「本選挙」

 第1段階が民主・共和両党の党内での争いであるのに対し、第2段階はそれぞれの党の候補者同士が戦う「本選挙」である。大統領選挙の日は、11月の第1火曜日(正確には、「第1月曜日の後の火曜日」で1日が火曜日となる日を除く)に、全米50州と首都ワシントンで行われる。

 11月の大統領選挙では、メイン州とネブラスカ州を除いて、一般投票で最も多く票を集めた候補者が、その州の選挙人をすべて獲得するという「勝者総取り」となる。

 選挙人の538人 は「50州から選出されている連邦上院議員と下院議員の数(それぞれ定数100人、435人)」+「首都のワシントンDCから上院議員、下院議員が選出されたと仮定した数(それぞれ2人、1人)」で各州とワシントンに配分されている。

 ただ、共和・民主両党の大統領候補の選挙運動は、全米50州を満遍なく、行うわけではない。実際、各候補が力を入れるのは、全米中でも特定の州に限られており、全く遊説に訪れない州もある。候補者にとれば、人口が多く、選挙人の多い州での選挙運動に注目するのはいうまでもない。また、州民の政党帰属性が明確であるため、両党の候補者にとっては、「選挙運動に力を入れなくても最初から勝てる州」「選挙運動に力をいれても最初から負けてしまう州」が事前に分かっている。

 それもあって、大統領選の雌雄を決めるのは、人口が比較的大きく、党派性が明確には出ないフロリダ州やオハイオ州などの5から10ほどの数の州である。この激戦州(battleground states)を奪う陣取りゲームが本選挙の最大のポイントとなっており、両党の候補者は選挙運動に投じる予算や時間をできる限り、激戦州に重点的に配分している。

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