第155回直木賞受賞者・荻原浩さん(撮影:具志堅浩二)

読売新聞:読売新聞のムラタです。おめでとうございます。

荻原:ありがとうございます。

読売新聞:先ほど選考会のあとの選評で、宮部みゆきさんが、圧倒的な読み心地の良さだとおっしゃっておりました。それに大変感心されたというお話だったんですけれども、荻原さんが文章を作っていく上で一番心掛けていること、特に今回短編集ということで、切れのようなものも必要だったんじゃないかと思いますが、どういうことに工夫されているのかと、あと実際、長年コピーライターとしてやられていましたが、その経験っていうのをこの作品にどのように生きているのかをちょっと教えていただけたらと思います。

荻原:選評に関しては初めて今お聞きしたので、本当にありがたいなと思います。文章書くときに気を付けてるのは、まずリズム。だから全部じゃないですけど、音読して、全体のリズムがどうかな。それから今回の小説がどういうリズムだろうかっていうのを考えながら書いています。それと、これはどなたもやってらっしゃることだと思うんですけど、五感を大切にするというか、考えて、だから目で見て心で考えるだけじゃなくて、耳で聞こえる音とか鼻で感じるにおいとか、そういうものを常に働かせて書くようにしています。

 あとは自分では意外と工夫してるつもりで、意外と気付かれてないので、こうやって自分で言うしかないんですけども、それぞれの主人公にボキャブラリーを合わせています。僕自身が勝手にしゃべるんではなくて、全ての小説っていうのは、登場人物がいて、主人公があって、その彼が少年だったり少女だったりしたら、その少年や少女が知ってる言葉だけで全部文章を、地の文も作る。彼、彼女たちが見てるわけなので。

 逆に年配の人が語り部だったり主人公であったりしたときには、その人の逆に、新しい言葉を知らない、死語なんかをもう多投して、そういう人の言葉でしゃべるようにする。だからあんまり自分を前面に出さないで、常に登場人物、主人公、その人の気持ちになるだけじゃなくて、出てくる言葉もその人に合わせて全部書き、なんだ、それぞれには書き分けてるつもりです。

読売新聞:コピーライターだったって経験はやはり生きてらっしゃいますか。

【中継録画】第155回 芥川・直木賞、受賞者の記者会見