「車を見るのが好きだったことを思い出した」ホンダの販売店で働く小島翔さん(24)

 佐藤さんと同期の小島翔さんはホンダカーズ福岡の博多バイパス店に勤務し、洗車などの業務を担っている。小島さんにはカレッジに入学する前に就労の経験がある。特別支援学校卒業後、九州の物流関係の企業に就職し働いたが、トラブルを起こして退職したのだ。そこからどのようにして再び就職に至ったのか。

丁寧に洗車する小島さん

 退職した職場について、小島さんは「やりがいを感じていなかった」と打ち明ける。かといって「勉強したいとも思っていなかった」といい、深く考えずにカレッジ福岡に入学した。入学当時からの小島さんを知る、同法人の小林知佐さんは「ふてくされた感じで、全然人と目を合わせて話してくれなかった。自分が心を開いた人でないと話せない印象があった」と話す。

 小島さんが変わるきっかけになったのはスポーツの授業だった。「授業で走ったり、サッカーをやったりしたのが楽しかった。それまで体を動かすのが好きじゃなかったけど、先生が手の動きや足の動きを詳しく教えてくれて、走るのが早くなったり、長い距離を走れるようになったりして、好きになっていった」。スポーツで汗を流す楽しさや、達成感を味わったことで前向きな気持を取り戻したのだ。小島さんは1年生の時に参加した市民マラソンでは3キロを歩いてゴールしたが、3年生の時には5キロを志願し、完走するまでになった。

 カレッジでは教養の授業の中にマラソンや登山など、ある程度の期間努力を積み重ねる必要があるスポーツを取り入れている。「折れない心」を育てるためだ。就労が可能な知的障害者でも、壁にあたった時やストレスがかかる場面で、パニックになってしまったりして職場でトラブルを起こしてしまう場合がある。カレッジは教養の授業を行うことで、すぐには投げ出さない粘り強さを身につけさせようとしている。

車が大好きな小島さん

 カレッジに通ったことで折れない心や社会性を身につけていった小島さんは進路を考えた時に、周りが勧める道に漠然と進むのではなく、自分の好きな道に進もうと考えた。特別支援学校の時に車が好きで、先生の車をアルバイトで磨いていたことを思い出し、「車に携わる仕事に就きたい」と思うようになったという。面接ではアルバイト経験をアピールし、障害者を受け入れている職場の中でも人気の高いホンダカーズへの就職が決まった。

 店長の七条英樹さん(52)は「仕事ぶりは丁寧。社員には自分から話しかけるように指導している」と話す。小島さんも「同僚の人に車のことを教えてもらったりとか、雑談したりするのが楽しい」と話し、良好な人間関係を築いているようだ。「いつか車の免許を取りたい」と話す姿は、どこにでもいる車好きの若者と大差なかった。

この記事が気に入ったら「いいね!」をお願いします