「カレッジに通ったことで、現実が見えた」病院で看護助手として働く松本千聖さん(24)

 「自分には何ができるんだろうって。助手だし、あまり役立ててない気がして」。沈んだ表情で話すのは福岡県須恵町の水戸病院で看護助手として働く松本千聖さん(24)だ。カレッジ福岡の1期生で今春就職した。今は看護助手として、介護の必要な高齢者が入院するフロアを担当し、ベッド周辺の掃除をする環境整備や食事の介助などを行っている。ただ、就職して3ヶ月、仕事の壁を感じているようだ。その姿は、今年新卒で就職した学生にも重なる。

 「患者さんに優しく接したい。でも優しくってどうすればいいのかわからない」。取材にはそう話していたが、仕事中、眠っている患者が抱いていたぬいぐるみが落ちそうになっていたのを見つけ、腕の中に戻してふとんをかけ直す姿が見られた。ぬいぐるみが収まったのを見てニッコリした松本さんの様子からは、客観的に見れば仕事はしっかりできていると伝わってくる。先輩の介護福祉士・稲永光枝さん(57)は「きちんと仕事をしてくれて助かっている。スタッフへの声掛けも良い」と評価する。

病院で働く松本さん

 元々松本さんは「医師」を志していた。主治医の女性医師に憧れ、私立大学の医学部のオープンキャンパスに参加するなどしていた。しかし、松本さんは知的障害者だ。知的障害者の課題として、自分が障害者だと認められないことがあるが、松本さんもまさに実力以上の夢を抱いていた。そしてその夢が叶えられないことに落胆し、後ろ向きになってしまっていた。特別支援学校卒業後はアルバイトをしたり、福祉作業所に通ったりしていた。

 自分が知的障害者だと認めたくない松本さんにとってカレッジ福岡への入学は苦痛だったが、カレッジで同世代の友人と過ごすことで少しずつ変化が生まれる。入学時はだらだらとして時間を守らなかったり、何をするにも自分で決められなかったりといった部分があったが、下級生が入ってくると、グループ行動をまとめたり、時間を守って行動したりできるようになってきた。さらにカレッジの「ヘルスケア」のプログラムで自己認知や自己肯定感を学んだことで、医師になる夢を「医療関係の仕事」に広げることができた。

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