悩みながらも前を見る松本さん

 「カレッジに行って良かったこと……あまりないけど、でも現実が見えた」と話す。看護助手を目指して水戸病院で10日間のインターンシップをやり抜き、見事内定を獲得した松本さん。仕事に自信が持てないながらも、今は遅刻や欠勤もなく取り組んでいる。そして、精神が不安定な時に飲んでいた薬も飲まなくなってきた。確実に一歩ずつ前進している。

「カレッジ」って何? 福祉の仕組みを使って教育を行う「福祉型大学」

 3人が通った「カレッジ福岡」とはどんな施設なのだろうか。カレッジは障害者総合支援法が定める「自立訓練事業」(約2年)と「就労移行支援事業」(約2年)を組み合わせた福祉施設。施設の利用については自治体から訓練等給付金が施設に支給されるため、授業料は原則無料だ。それぞれの事業を個別に行う社会福祉法人は全国に多数あるが、4年制として運用し始めたのはカレッジ福岡が初めてだ。カレッジ福岡は、福祉サービスを大学に見立てたもので、本当の大学ではない。

カレッジ福岡の立ち位置

 しかしカレッジ福岡では前半2年間の自立訓練事業を「教養課程」、後半2年の就労移行支援事業を「専門課程」と位置づけ、訓練の中に障害者の特性に対応した教育プログラムを取り入れている。研究論文やスポーツ、経済、資格・検定の授業などがあり、支援員は教員免許を持った人材を中途採用している。

カレッジ福岡の授業風景

 このような施設がなぜ必要なのか、カレッジ福岡を設置した社会福祉法人「鞍手ゆたか福祉会」(福岡県鞍手町)の長谷川正人理事長に話を聞いた。

──なぜカレッジ福岡を作ろうと思ったのですか
 「私の娘(24)は重度の知的障害者で、自閉症で言葉もない。色んな支援が必要な娘だが、特別支援学校高等部を卒業するときに、「まだ社会に出すのは早過ぎるから留年させてほしい」と頼んだらだめだった。1、2年経った頃、同じように18歳で子どもを社会に出すのは早過ぎると思っている親が全国にたくさんいることを知った。その人達は特別支援学校に専攻科を設置し、20歳までは学校にいられるようにしようという運動をしていたので、専攻科と同じようなものを作れないかと思ったのがきっかけだった。

 全国には自立訓練事業や就労移行支援事業を使った学びの場(福祉型専攻科)もあったが、ほとんどが2年制。2年だと、卒業後のことをすぐに考えなければならない。そうではなくて出口のことを考えずに2年間は青春を謳歌し、生きていく上で必要な学び、多方面の経験ができる場を作りたいと思った。それだと2年じゃ足りないので、福祉事業を組み合わせて4年制にしたらいいと思った」

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