保護者の7割が「進学必要」かき消される希望

全障研茨城支部のアンケートから作成

 長谷川さんのように、知的障害者の子どもを持つ親からは、特別支援学校卒業後の進路の選択肢が少なすぎることへの不満が聞かれることは少なくない。

 全国障害者問題研究会の茨城支部が2012年に行った調査(特別支援学校に通う保護者578人にアンケート。回収率69%)では、高等部卒業後の進学は必要かとの問いに対して74%が「はい」と回答。理由は「子どもの発達がゆっくりであるから学びの期間も延長すべき」(52%)が最も多かった。

 この調査を行った、全国障害者問題研究会の常任全国委員で元特別支援学校教員の船橋秀彦さん(61)によると、保護者からは「卒業後にもう少し教育の機会があれば大きく成長できるのでは」「健常者なら当たり前のように大学や専門学校に進学する時代に、障害者が18歳で社会に出るのは早過ぎる」などの声が聞かれ、「潜在的に障害者の高等教育へのニーズは高いと感じた」と話す。一方で、「現在の特別支援学校高等部はほとんど進路指導で進学の選択肢を提示しておらず、こういった要望はかき消される現状にある」と訴える。

 カレッジ福岡が2012年に発足して4年。保護者からのニーズは根強く、同様の施設は少しずつ増えている。鞍手ゆたか福祉会はカレッジ福岡設立後、「カレッジながさき」(長崎県大村市)「カレッジ早稲田」(東京都新宿区)など今では5つのカレッジを展開。約120人の学生が在籍している。その他、滋賀県大津市には社会福祉法人共生シンフォニーが「くれおカレッジ」を設立。大阪で障害者雇用に力を入れている株式会社「きると」が大阪市と兵庫県伊丹市に「スクールきると」を開設している。

青年期の知的障害者になぜ学びが必要?長谷川さんが考える意味

 「知的障害者にいくら教育を与えても上限があるのでは。なぜ、学びが必要なのか」。思い切って失礼な質問をぶつけてみたが、長谷川正人理事長は、一つのデータを示してくれた。専攻科があり20歳まで学べる特別支援学校の2校(三重県と大阪府)の卒業生について、1997年から2011年の間に卒業した42人のうち、就職した23人を追跡調査したところ、卒業後に就職した先で継続して働いている人は13人で56%の定着率。残りの10人は離職していたが全員が再就職していたという。

 「学ぶ期間が伸びることで再起する力が育っている。18歳で就職したら働くことの意味すらわからない。働くためには職業能力とか経験とかも必要だが、知的障害者で仕事に挫折する人は、人との関わりや社会性で挫折する人が多い。カレッジでは一般教養、社会常識を学ぶ機会を大切にしている。それがすごく必要で、就職するために就職のことだけを学ぶのではなく、もっと人として大切なことがベースにないと。そこがカレッジの意味かな」

 子どもから大人へ移行する青年期。高等教育を受けながら、学生から社会人としての自覚を身に着けていくのは健常者も障害者も変わらない。それなのに障害者だからその機会を得られないのは平等ではないだろう。4月に障害者差別解消法が施行された今、この問題に向き合うべきではないだろうか。

 「障害者にも進学の選択肢は必要」。笑顔で話す長谷川さんからは1期生3人を確かに社会に送り出したことによる自信が感じられた。