米インターネット動画配信サービス「Netflix」が配信するドラマ『ハウス・オブ・カード 野望への階段』は、陰謀うごめくアメリカ政界を描き、世界中で話題を集めている。ハイライトの一つは、ケヴィン・スペイシー演じる主人公のフランシス・アンダーウッドが時に手段を選ばず大統領の座をかけて闘う大統領選だろう。

[写真]テレビドラマのような泥仕合が続く2016年の米大統領選(ロイター/アフロ)

 2016年大統領選挙ほどテレビドラマのような選挙戦はかつてなかった。これは筆者だけでなく、世界のアメリカ政治の研究者にとっても同じであろう。それほど、「何が起きているのか」に目を疑い続けた選挙戦だった。ヒラリー・クリントン、ドナルド・トランプ両候補とも、まるで前述のドラマ『ハウス・オブ・カード』の出演者そのものだ。しかもどちらもいわくつきであり、実に人間臭い。どちらが大統領になったとしても、彼らのドラマはそんな簡単に収束しそうにない。

 代表的な民主主義国家であるアメリカのドラマとリアルで繰り広げられる過去にないタイプの大統領選。この選挙戦を振り返りながら、クリントン、トランプのいずれかが担う新政権を展望したい。(上智大学教授・前嶋和弘)

“主人公”クリントンのアキレス腱

 主人公であるヒラリー・クリントンの経歴はファーストレディから始まり、上院議員、国務長官と実に輝かしい。ワシントンの究極のインサイダーであり、無論、どんな政策にも詳しい。政治家としては抜群の安定感だ。まさにピカピカの存在である。

[写真]輝かしい政界の経歴がアキレス腱になりかねないクリントン氏(ロイター/アフロ)

 しかし、長い経歴こそ、クリントンのアキレス腱に他ならない。経歴が長くなればなるほど、恩恵を被りたいと狙う人々にとっては格好のターゲットとなるだめだ。金融業界などとの数々の癒着だけでなく、夫であり、元大統領のビル・クリントンや、娘のチェルシーと共同で運営する「クリントン財団」には、アメリカ国内だけでなく、中国を含めた海外から資金が殺到する。ヒラリーは、インサイダーはインサイダーの典型であるかのように金まみれになっていく。

 さらに、民主・共和両党の指名候補が決まり、本選挙が一気に本格化してきたころの9月11日、「ナインイレブン」の記念行事という衆人環視の中で、気を失いよろめいてしまった。ひた隠しにしてきた健康問題もこれを機に懸念されるようになった。

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