会計検査院が内閣に提出した検査報告の中で、日銀の財務の健全性確保が重要との指摘がありました。量的緩和策とマイナス金利政策の導入によって日銀にはすでに10兆円近くの含み損を抱えているとの報道もありますが、検査院の指摘は、こうした状況を考慮してのものと思われます。日銀に含み損が発生していることは問題ないのでしょうか。

損すると分かっていても国債を買い続ける

[イメージ写真]日銀が抱える国債の含み損は数兆円に、だれがどうやって穴埋めするの?(ペイレスイメージズ/アフロ)

 会計検査院は政府機関などが適切に税金を使っているのかを検査するための組織で、毎年、決算報告を基に会計検査を実施しています。11月7日に内閣に提出された検査報告では、国債の利回りが極端に低下していることから、日銀は財務の健全性の確保に努めることが重要であるとの指摘を行いました。

 日銀は量的緩和策の実施以後、年間80兆円のペースで国債を買い続けてきました。2016年3月末時点において日銀が保有していた国債残高は約295兆円でした。これは額面での数字ですが、日銀はマイナス金利政策を導入していますから、金利がマイナスでも(逆に言えば、債券の購入価格が額面を大きく上回っていても)、国債を市場から買い付けなければなりません。

 つまり確実に損することが分かっていても、国債を買い続ける必要があるわけです。実際に国債を購入した取得価格をベースにした残高は約302兆円(均等償却後)となっており、額面との差額は約7兆円となっています。つまり償却がまだ終わっていない分と額面の差額が7兆円あるということなのですが、これが日銀が抱える含み損です。

含み損が増えた場合は、“債務超過”に

 ちなみに2016年3月時点における日銀の自己資本は約7.4兆円ですから、計算上は含み損によって自己資本がなくなってしまうことになります。これ以上、含み損が増えた場合には、理屈の上では債務超過に陥ってしまうと考えてよいでしょう。

 日銀は2004年度から長期国債の評価方法を低価法から償却原価法に変更しており、国債の価格下落分を損失として計上する必要がなくなっています。つまり満期まで保有していれば国債価格を気にする必要はなくなったわけです。ただ、取得したコストが額面を上回っている場合には、その差分について、毎年均等償却する必要があります。先ほどの302兆円はその償却を終えた後の残高です。マイナス金利下で国債の残高がさらに増えていけば、毎年発生する損失額も増えていきます。

 財務体質を健全にするためには引当金が必要となりますが、その原資をどうするのかという問題があります。また、日銀が生み出す利益は国庫に納付されており事実上、財源と位置付けられていますから、日銀の損失が拡大することは税収を失うことを意味しています。いろいろな意味で量的緩和策は難しい局面を迎えているようです。

(The Capital Tribune Japan)