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 月を超えて火星、さらにはその先へ ── わたしたち人類は、一体、宇宙のどこまで行けるのだろう。もし、他の惑星や衛星でも農業が行えれば、地球から持ちだす物資の量が減り、人類の宇宙における活動範囲の拡大を一層後押しするだろう。宇宙航空研究開発機構(JAXA)宇宙科学研究所時代に、惑星など宇宙での農業を検討した「宇宙農業構想」の取りまとめに関わったJAXAの山下雅道名誉教授(68)に、栽培される作物の候補を含む同構想の中身と宇宙農業の今後について聞いた。

火星の地下にある水や大気中の二酸化炭素を活用

[イメージ写真]火星で農業を営む日はくるのか(アフロ)

 宇宙でのミッションの期間が長ければ長いほど、生命維持に必要な食料や水、酸素など、地球から持ち出す物資の量が増えていきます。

 月の場合、地球からは3日くらいで行けるほか、宇宙船をいつでも発射できますので、宇宙農業はあまり必要ありません。ところが火星の場合、行くだけで約260日かかります。発射のタイミングはだいたい2年に1回しかありませんし、それは火星から地球に向かう際も同じです。結局、地球と火星を行き来するのに2年半から3年はかかることになります。数人ならともかく、多人数による火星での活動をめざす場合には、現地における食料生産に目を向ける必要があります。
 
 宇宙農業の構想では、目標として、火星への往復飛行および火星基地での生命維持を実現して、火星での生活を安全で快適なものとすることを掲げました。

農業は温室ドームの中で

動物性食物として期待されるドジョウ(写真:アフロ)

 農業は、温室ドームの中で行います。光は太陽光が利用できます。地球から持ち込んだ物資だけではなく、火星の地下にある水や大気中の二酸化炭素、窒素、土およびに含まれるカリウムやリンなども活用します。堆肥は排泄物などから作ります。

 どのような作物を栽培するかを考えるにあたり、一番基本となるのは、生命維持に必要な栄養が足りるかどうかです。炭水化物などエネルギーとなる物質や、体の組織を作りかえるのに必要なタンパク質、ビタミンやミネラルといった微量成分などを、いかにバランス良くまかなうか。加えて、これらの栄養を含む作物を育てるのに必要な耕作面積を最小化するにはどうすればいいのかを検討しました。

 その結果、炭水化物では、栽培面積が少ないイネと、甘みがあって食物繊維を多く含むサツマイモ、タンパク質の供給源には、大豆、ビタミンCなど体内で作れない微量成分はコマツナなどの緑黄色野菜が良いと考え、これら4つを宇宙農業の基本食材として選びました。

 必要な栄養を念頭において、1人あたりの年間消費量を計算すると、コメ約110kg、大豆約37kg、サツマイモ約72kg、コマツナ約110kgとなりました。多毛作を行うとすれば、1人あたり約200平方メートルの耕作面積でこれら基本食材が十分確保できます。

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