年金の滞納が社会問題となっていますが、滞納している人の実に9割以上が、所得が低く、申請をすれば年金保険料の一部あるいは全額が免除される可能性が高いことが明らかとなりました。滞納者に厳しく対応しても年金財政上はほとんど効果がなく、むしろ免除者を増やしてしまうという皮肉な状況です。

年金滞納者に厳しく対応しても9割は免除対象者になってしまう皮肉

 塩崎厚生労働大臣は、参院の厚生労働委員会において、年金の滞納者に対する強制徴収は「現実的に困難」であると発言しました。

 サラリーマンの場合、年金保険料は基本的に会社を通じて徴収されますから、本人は何も考えなくても給料がもらえる限り、保険料の支払いが滞ることはありません。しかし自営業者、パート労働者などの第1号被保険者の場合には、年金の滞納という状況が発生します。

 2014年における第1号被保険者は約1600万人でしたが、このうち完全に納付しているのは約600万人しかおらず、残りは一部納付者、滞納者、免除者(納付猶予者など含む)ということになります。過去2年間、まったく納付していない人は370万人と、全体の2割を超えています。

 年金の未納者に対する批判が高まってきたことから政府は強制徴収を進めてきましたが、ほとんど効果は上がっていません。その理由は滞納者の多くが、免除対象者になってしまうからです。

 現在の年金制度では所得が一定水準以下の場合には、申請すれば保険料納付が免除となる仕組みがあります。例えば子供が1人いる夫婦の場合、年間の所得が127万円以下であれば保険料は全額免除となります。また、住民税が非課税となる所得もほぼ同水準です。税金が課されない人から保険料を徴収することは難しいですから、この所得水準で保険料納付が免除になるのはやむを得ないでしょう(ちなみに相対的貧困の定義においても年間所得は122万円と計算されます)。

 第1号被保険者の属する世帯の所得分布を見ると、100万円未満がもっとも多く全体の25%を占めており、続いて200万円未満が16.3%となっています。先ほど未納者は2割を超えていると書きましたが、その約半数がこの年収200万円未満の世帯です。未納者の中には、保険料免除の制度を知らない人が一定数存在するはずですから、役所が督促して正式に手続きをすると、結局は免除対象者(一部免除含む)になってしまうというケースが多いと思われます。