日本の原子力産業が重大な岐路に立たされています。東芝は米国の原子力事業で2期連続の巨額損失を計上することがほぼ確実な情勢となりました。国内の原子力3社は政府主導で統合が模索されていますが、各社はそれぞれに事情を抱えておりなかなか話は進展しません。日本の原子力産業はどうなってしまうのでしょうか。

東芝がしぶしぶ原子力事業の減損額を公表、問題の「のれん代」って何?

東芝は原子力事業で数千億円の損失も

 東芝は2017年3月期決算において、米国原子力事業をめぐって数千億円の損失を計上する可能性があることが明らかとなりました。同社は2016年3月期の決算でも、原子力事業に関して2476億円の巨額損失を計上しており、実際に損失が確定すれば2期連続の巨額損失となります。

 問題となっているのは、以前に買収した米国の原子力企業ウェスチングハウス(WH)社です。東芝は累計で数千億円の金額をWH社の買収に費やしてきましたが、買収金額はWH社の実際の資産価値を大きく上回っており、その分は、のれん代として同社の資産に計上されています。

 同社はWH社以外にも買収を行っており、一時期、のれん代は6700億円にも達していました。ところが買収後のWH社の経営は順調ではなく、本来であれば損失処理が必要でしたが、東芝はなぜかこれを先送りし、2016年の3月期決算で損失を計上しました。

 東芝はWH社を通じて2015年12月に原子力サービスを手がけるCB&Iストーン・アンド・ウェブスター社を買収していますが、この案件は、事実上、東芝グループと原発建設を手がけるCB&I社における紛争解決の手段という意味合いが大きく、買収後に大きな損失が出ることが予想されていました。ただ、金額が非常に大きいことから、東芝は再び経営危機に陥る可能性も出てきました。

三菱重工も原子力部門で苦境に

(写真:Fujifotos/アフロ)

 一方、三菱重工も原子力部門で苦境に立たされています。同社が設計や開発に深く関与してきた高速増殖炉もんじゅは最終的に廃炉となることが決定しました。もんじゅに代わる高速炉の開発も決まりましたが、先行するフランスから技術供与を受けることになる可能性が高く、三菱重工がどの程度リーダーシップを発揮できるのかは不透明です。このほか、国内では原発の廃炉問題など課題が山積しており、各社は非常に難しい舵取りを迫られています。

 こうした状況を受けて、国内では原子力産業の統合に向けた話し合いが進んでいます。すでに日立、東芝、三菱重工の3社は燃料事業の統合について調整を行っており、来年春には実現する見通しです。しかし、燃料事業だけでなく本体の統合となると各社の利害が大きく衝突することになるため、そう簡単に話は進まないでしょう。

 米国は国策としての原子力事業と民間企業の発電ビジネスは完全に切り離されていますが、日本の場合、これらは渾然一体となっています。誰が主導権を握るのかはっきりしない状況が続いており、これが全体としての意思決定を遅らせているようです。

(The Capital Tribune Japan)

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