青山学院に独走を許し、総合3位でゴールした早稲田大学(写真:田村翔/アフロスポーツ )

 第93回箱根駅伝は「3連覇」&「駅伝3冠」を狙った青学大が悠々と偉業を達成した。その裏では王者に挑み、敗れたチームもある。前回2位の東洋大、同3位の駒大、全日本2位の早大、同3位の山梨学大、出雲で青学大を苦しめた東海大。この“5強”は、なぜアオガクの背中に届かなかったのか。

 指揮官たちを取材すると、今大会の特徴と、各校の敗因が浮き彫りになった。まずは今大会の特徴だが、非常にレベルが低かったといえる。青学大の総合タイムは11時間4分10秒。前回(10時間53分25秒)、前々回(10時間49分27秒)の優勝タイムと比べて、ガクンと落ちている。青学大の各区間を前回と比べると以下のとおりだ。

1区 1時間1分22秒→1時間4分00秒
2区 1時間7分35秒→1時間7分56秒
3区 1時間2分24秒→1時間3分03秒
4区&5区 2時間14分34秒→2時間18分46秒
6区 58分31秒→58分48秒
7区 1時間3分08秒→1時間5分40秒
8区 1時間4分21秒→1時間4分21秒
9区 1時間11分23秒→1時間9分55秒
10区 1時間10分07秒→1時間11分41秒
※距離が短縮・延長したため4区と5区は合算タイム。

 一斉スタートの1区は集団のペースがタイムに影響するため参考記録になるが、単独走が基本となる2~10区では、選手のレベルがタイムに現れる。前回よりもタイムが良かったのは前回区間7位だった9区のみ。2区一色恭志、3区秋山雄飛、6区小野田勇次、8区下田裕太の4人は前回と同じ区間を走りながら、8区下田が同タイムで、他の3人は前回からタイムを落とした(10区安藤悠哉も同区間を走った前々回よりタイムを下げている)。

 その結果、優勝ラインが下がったわけだが、他の有力校も良くなかった。3区から9区まで青学大の後を走った早大の相楽豊駅伝監督も、「気温は少し高かったですけど、風はなかったですし、記録が出ないコンディションではなかった。青学大は7区の田村和希君がブレーキしたのに、勝ちました。近年はそういうことはあまりないので、他の大学も力を出せなかった部分があると思います」と話す。青学大だけでなく、全体的にグダグダ感のあるレースだったわけだ。

 それでも青学大は圧勝した。
 その理由のひとつに「1区の流れ」が大きく影響していたと思う。芦ノ湖で往路の戦いを終えた東洋大・酒井俊幸監督と出会うなり、「いや、もったいなかった。あそこで押し切っていかないといけなかった……」と悔しそうな顔を見せた。「あそこ」とは、1区服部弾馬が5kmで飛び出したシーンを指す。

 東洋大は1区にエースを起用して、先制攻撃を仕掛けてきた。服部は全日本大学駅伝でも1区で飛び出して、区間2位の早大・武田凜太郎に11秒、青学大・下田裕太に31秒という差をつけている。箱根では後続を「30秒以上引き離したい」(酒井監督)と考えていた。

 しかし、「1区服部」は徹底マークにあい、苦戦した。5kmから飛び出す準備をしていたが、誰も前を引っ張ろうとせずに、5kmは16分05秒という超スローペースに。服部は予定通りにスパートするも、独走態勢を築くことはできなかった。結局、最終的にアタックしたのは最後の1km。鉄紺軍団のエースは区間賞を獲得したが、2位の東海大・鬼塚翔太に1秒差、青学大・梶谷瑠哉に4秒差しかつけることができない。東洋大の“勝利の方程式”は、1区終了時で崩れたことになる。