タレント豊富な攻撃陣を擁する東福岡を完封した東海大仰星(写真:アフロスポーツ)

  試合会場の等々力陸上競技場に到着し、ロッカールームに入ってすぐに、東海大仰星(大阪)の中務雅之監督の携帯電話に一通のメールが届いた。送り主は遠く花園で連続日本一をかけて戦っている、同校ラグビー部の湯浅大智監督だった。

 キックオフ直前とあって、返信することはできなかった。それでも、簡潔に綴られた激励の言葉は、大会連覇を狙う東福岡(福岡)との準々決勝に臨むサッカー部を力強く後押ししてくれた。

「湯浅さんだけでなくラグビー部の選手たちも、そういった気配りを含めた心温まる行動をいつもサッカー部に対してしてくれる。本当に感謝しています」

 強風が吹くなかで行われた5日の第95回全国高校サッカー選手権大会5日目。4年ぶり5回目の選手権の舞台で、最高位が前回出場時のベスト8だった東海大仰星が、今大会最大の番狂わせを演じてみせた。

 風下の前半は耐え忍ぶ戦法を選択。武器である組織だったプレスと激しい球際の攻防で、Jクラブ内定者3人を擁するタレント軍団のパスワークを寸断する。一転して風上に回った後半は前線へ大きくボールを蹴り込み、もうひとつの武器である走力を生かしてグイグイと圧力をかけていく。

 お世辞にも華麗とはいえない。無骨で泥臭く、ゆえにたくましさすら感じさせるスタイルが結実したのは、両チームともに無得点で迎えた後半21分。準々決勝で東福岡と対峙すると照準を定め、磨きをかけてきたセットプレーが値千金の決勝ゴールをもたらした。

 キッカーを務めるキャプテンの松井修二(3年)の言葉が、東福岡の試合映像を徹底して分析してきた跡を物語っている。

「セットプレーに対する相手の守備が、疎かになるのはわかっていました。セットプレーは毎日練習してきたので、あの場面では得点できるかなと」

 松井が蹴った左CKの標的は、ファーサイドのDF玄尚悟(3年)。強烈なヘディング弾は相手に当たり、こぼれ球に松山樹生(3年)、新保隼人(3年)の両MFが猛然と詰めて大混戦となった直後に、フリーでニアサイドにいたDF吉田純平(3年)の目の前に転がってきた。

 とっさに出した左足で押し込んだ吉田の公式戦初ゴールに苦笑いしながら、東海大仰星サッカー部のOBでもある34歳の中務監督は思わず目を細める。

「最初で入ればよかったけど、東福岡さんの守備のバランスもよかったし、その後に転がってきたところで上手くヒットできなかったのはウチの技術的な問題ですね。ただ、最後まで集中して目を離さず、準備していてくれた結果だと思うので」