トランプ氏が次期大統領に決まってから、日本企業が続々と米国企業のM&A(合併・買収)を発表しています。トランプ氏の勝利で何か状況が変わったのでしょうか。また米国企業を買収するメリットはどこにあるのでしょうか。

三井住友銀、TDKなどが次々と米企業の買収を発表

(ロイター/アフロ)

 三井住友銀行は昨年12月20日、米国の鉄道貨物車両リース会社であるアメリカン・レールカー・リーシングを約27億8000万ドル(約3300億円)で買収すると発表しました。同社はすでに米国の貨車リース会社を保有しており、今回の買収が完了した後には、両社を事業統合する可能性が高いといわれています。

 翌21日、部品メーカーのTDKが米国のセンサーメーカーであるインベンセンスを買収すると発表しました。インベンセンスはスマホに搭載するジャイロセンサーなどの設計を得意とする企業で、買収金額は約13億ドル(約1500億円)。TDKの技術と組み合わせることで、IoT(モノのインターネット)や自動運転車などの分野を強化します。また同じ日には日立建機も米国企業を買収すると発表しました。鉱山機械などの部品サービスを手がける米H-Eパーツを2億4000万ドル(約280億円)で買収し、北米市場を強化します。

 さらに翌22日には日本ペイントが米国の塗料大手ダン・エドワーズを買収すると発表し、日本企業が続々と米国企業を手中に収めています。M&Aだけでなく、中期計画の策定などにおいて米国への投資や米国企業のM&Aを掲げる企業が相次いでいる状況です。

世界市場で唯一、長期的な成長が見込めるのは米国市場だけ

 日本企業が米国市場の開拓を急いでいるのは、今後の企業経営において、米国市場の攻略が不可欠となっているからです。国内市場は少子高齢化で縮小傾向が続いており、期待していたアジア市場も中国の景気失速ですっかり元気がなくなってしまいました。欧州の状況もあまりよくありません。

 一方、米国は移民の増加もあり、人口が長期的に増加する数少ない先進国です。日本よりも購買力の高い消費者が3億人以上も存在しているわけですから、突出した巨大市場といえます。結局のところ、世界市場の中で唯一、長期的な成長が見込めるのは、米国市場だけというのが現実なのです。

手元資金を活用する最後のチャンスか

 トランプ氏の当選はこうした状況にさらに拍車をかける結果となりました。トランプ氏はアメリカ・ファーストを掲げており、米国の利益を第一にする方針です。日本などの外国企業にとっては、外国企業として米国市場に進出したり、製品を輸出するよりも、もともとある米国企業を買収した方が安全です。

 先日、トランプ氏と電撃的会談を行い、米国への巨額投資と雇用創出を約束したソフトバンクの孫正義社長も、おそらく同じ考え方に基づいているでしょう。今後、円安が進むのだとすると、日本企業にとっては手元資金を活用する最後のチャンスとなるかもしれません。

(The Capital Tribune Japan)