いまだロングラン上映されている『君の名は。』(THE PAGE編集部)

 先日、「第90回キネマ旬報ベスト・テン」が発表され、日本映画部門の1位には、のんが声優として主演を務めたアニメ映画『この世界の片隅に』が選ばれ、続く2位には『シン・ゴジラ』、3位には『淵に立つ』がランクインした。

 そんな中、2017年1月9日現在、興収229億2482万5900円をあげて、日本映画歴代興行収入ランキングで『千と千尋の神隠し』に次ぐ2位という輝かしい記録を達成した『君の名は。』が10位圏外となり話題を集めている。

「君の名は。」がまさかの圏外

 「キネマ旬報ベスト・テン」は1919年に創刊された映画誌「キネマ旬報」が、1924年から発表している歴史ある映画賞。

 【作品部門】は、映画評論家や新聞記者、映画雑誌編集者などから選ばれた選考委員が、日本映画と外国映画それぞれ10本を選び、1位は10点、2位は9点……10位は1点と評価を数値化し、その合計点数で順位が決まる。そして、誰がどの作品に入れたか、そして選考理由などが2月上旬に発売される同誌の「特別号」で掲載される。

 多くの映画賞のように、ノミネーション作品を審査員が合議制で決める賞とは異なり、ある意味、透明度の高い賞となっている。

個人が選んだベストテンの集合体の賞

 選考委員はいわゆる映画に精通している人たちが多く、人によっては年間300本近く観賞し、その中から個人の基準に照らし合わせた10本(外国映画を合わせると20本)を選ぶのだが「キネマ旬報ベスト・テン」の特徴はここにある。

 いわゆる興行的に成功した作品の中から選ぶのではなく、規模の大小を問わず、そこにはある程度の客観的視点はあるとは思われるが、基本的には個人が選んだベスト・テンの集合体の賞である。しかも、審査委員はそれぞれが映画に対してかなり個性的な視点を持った人たちだ。

 そんな中、客観性を持たせるのは、「キネマ旬報」が選んだ選考委員のバランスと言えるだろう。映画に対して明確な意識を持つ個性的な論者たちを、年齢、性別など幅広く揃えることによって、偏りを少なくするというのが前提。とはいえ、やはり過去のベスト・テンをみれば、いわゆる興行的な“大ヒット作品”とは全く異なったラインナップと言える。

 前述したように、2016年に歴史的な大ヒットを遂げた『君の名は。』はベスト・テンにランクインしなかったが、近年を振り返ってみても、興行収入ランキングで上位の作品が「キネマ旬報ベスト・テン」に入らないことは決して珍しいことではない。キネマ旬報元編集長の関口裕子氏は、次のように語る。

 「評論家が選ぶベスト・テンは必ずしも興行成績と一致しません。評論家は、観客が発見できなかった、つまり興行的には振るわなかった映画も見ていますので、何人かがそんな作品を持ち点の高い上位で推してくれば、一般の方にとって耳慣れない作品がランクインしてくることもあるわけです。ランクインする作品には2種類のタイプがあります。ひとつは、1位(10点)で推してくる方が数人いるケース、下位(1点、2点)ではあっても比較的多くの方が支持するケース。『君の名は。』は後者なのではないでしょうか? ですので、評価した方は多いものの、得点にはたぶん結びつかなかった。ただ、2月3日発売の『キネマ旬報』で発表される読者のベスト・テンは、皆さんがご覧になっている興行収入が高い作品が上位に選ばれることが多いため、ランク・インの可能性は高いでしょう」

この記事が気に入ったら「いいね!」をお願いします