ドナルド・トランプ氏が20日に正式にアメリカ合衆国の大統領に就任した。就任前から異例ともいえる支持率の低さに直面したトランプ大統領だが、アメリカ国内では就任式典の翌日から大規模な反トランプデモが各都市で行われており、前代未聞の船出となっている。また、EUやNATOを軽視するかのような発言に、ヨーロッパ各国の首脳が反発。「トランプ旋風」がヨーロッパまでも分断しないかという不安がすでに増大している。

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すでに政府関係者から不満が噴出

[写真]就任演説を行うトランプ大統領。集まった聴衆は前回オバマ氏の時より半減したと報じられている(代表撮影/ロイター/アフロ)

 寒さが続く1月中旬のワシントンでは、1937年から1月20日に大統領就任式が開催されるのが慣習となっているが、現地時間20日の午前11時から行われた大統領就任式には、トランプ新大統領を見るために最大で約90万人が合衆国議会議事堂の周りに集まった。2009年の大統領就任式では、オバマ大統領の演説を見るために約180万人が集まっており、8年前ほどの盛り上がりはなかった。

 就任式が行われた時間帯のワシントンの気温は9度。決して温かいとは言えないものの、2009年1月20日に行われたオバマ大統領の就任式の気温はマイナス1度で、今回は過去に大統領就任式が行われた日の正午の気温としては4番目に温かいものであった(最も温かい中で行われた就任式は、1981年のレーガン大統領就任時のもので、気温は約13度であった)。8年前の半分以下とも伝えられる参加者の数は、天候や気温といったものが原因ではなく、就任直前の支持率が40パーセント台前半という低さに直面しているトランプ大統領への期待感の低さを表しているようにも思われる。

 「今日この日から、アメリカ第一のみにしていくのだ」と、就任演説で語ったトランプ大統領。ワシントン・ポスト紙はトランプ大統領が演説の中で、歴代の大統領が就任演説で使用したことがない言葉が24あり、「虐殺」や「分断される」、「盗まれる」、「墓石」といったネガティブな言葉が就任演説で使われる特異さを伝えている。「虐殺」という言葉はアメリカ国内の治安に言及した際に用いられた言葉だが、アメリカにおける凶悪犯罪発生率は過去50年で最も低い状態にあり、米司法統計局の調べによると、2015年の暴力犯罪発生率は1993年の4分の1程度にまで減少している。治安や雇用に関する言及で事実とは異なる点が存在すると、すでにアメリカ国内の複数のメディアによって指摘される始末だ。

 最大で90万人が集まったとされる20日の就任式だが、就任式の翌日にはワシントンを含む世界600か所以上で、トランプ大統領就任に反対するデモが一斉に行われた。以前から女性蔑視発言が何度も批判されてきたトランプ大統領に対し、「女性たちの行進」と名付けられたデモが行われ、ワシントンだけで50万人以上が参加したと米メディアは伝えている。このデモはニューヨークやシカゴ、ボストンといったアメリカ各地の都市部でも行われ、アメリカ国内外で行われた「女性たちの行進」の参加者の総数は100万人を突破している。就任式翌日にワシントンだけで約50万人が参加した反トランプ行進は、主催者側が当初予想していたよりも多くの参加者が集まり、「反トランプコール」はホワイトハウス周辺でも十分に聞き取れるほどであったのだという。

 トランプ氏に対する不満は政府関係者からもすでに噴出している。CNNは22日、20日にCIA長官を退任したジョン・ブレナン氏がトランプ大統領の配慮に欠ける演説に激怒しているという関係者の話を伝えている。大統領就任の翌日となる21日朝にバージニア州ラングレーにあるCIA本部を訪問したトランプ大統領は、殉職した職員の功績を称えて作られた慰霊碑(殉職した職員の数に合わせて、117個の星がある)の前で、職員や関係者らに向けて演説を行った。演説の様子はテレビ中継されたが、トランプ大統領は前日の就任イベントや、自身が表紙を飾った雑誌、メディアとの確執などに関する話に終始。加えて、どのくらいのCIA職員が大統領選挙で彼に投票したのかと、聴衆に問うような場面もあり、殉職者への配慮のなさと政治的な話を演説で持ち出したことにブレナン氏は憤慨したのだという。

 また、内務省の下部組織にあたる国立公園局は20日、2009年と2017年の大統領就任式の様子を空撮した写真を並べて比較したニューヨークタイムズ紙記者のツイートを、公式アカウント内でリツイートした。リツイートされた投稿はその後削除されたが、政治サイト「ポリティコ」によると、トランプ氏の周辺から内務省にクレームが入ったのだという。

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