水槽を泳ぐアリゲーター・ガー(著者提供)

 関東地域の重要な水源となっている多摩川。山梨県から東京都、神奈川県へと流れ、東京湾へとつながる一級河川です。長大な河川としては珍しく、自然護岸も多く残っており、その河川敷は古くから人々の憩いの場として利用されてきました。

 もともと自然豊かだったこの川も、かつては高度経済成長時代の環境破壊と人口密集にともない、汚染が進行し、水道水に使えないほど水質が悪化したこともありました。1980年代以降、下水道や浄化槽の整備など生活排水の管理が進められたことにより、水質が改善されてきており、最近では、江戸時代から「多摩川鮎」「江戸前鮎」と愛好された鮎が多摩川に戻ってきたと話題になりました。

 ところが、水質がよくなって、増えたのは鮎だけではありませんでした。様々な外来魚の定着も進み、これまでに200種以上もの外来魚が多摩川で捕獲されています。(解説:国立研究開発法人国立環境研究所・五箇公一)

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外来生物の宝庫、多摩川

水槽を泳ぐアリゲーター・ガー(著者提供)

 その中身をみてみると、グッピーやエンゼルフィッシュといった小型の魚から、ピラニア、アロワナ、アリゲーター・ガーなど、水族館でしか見たことのないような大型の熱帯魚まで含まれます。

 2014年には、多摩川河川敷で体長1メートルのニシキヘビが捕獲され、ニュースにもなりました。その他、カミツキガメやワニガメなどの外来カメ類も多数捕獲されています。

 ある意味、生物多様性の高さはアマゾン川にも匹敵するのではないのかと、「タマゾン川」と揶揄されるほど、多摩川は外来生物の宝庫となってしまっています。これらの外来生物のほとんどが、ペットとして販売されている種であり、飼いきれなくなった飼い主たちが放棄した個体が野生化したものとされます。一部の種は定着を果たし、繁殖もしていると考えられます。

 しかし、熱帯魚がどうやって冬季の冷たい河川中で生き延びることができるのでしょうか? その理由には、私たちのライフスタイルの変化が大きく関わっています。電気給湯器・ガス給湯機の普及とともに、私たちは日常的に大量の温水を使用し、排出するようになりました。その結果、多摩川の水温が上昇し、冬でも熱帯魚が生きられる水域が出来てしまったのです。皮肉なことに水質が改善され、鮎など在来の魚が増えたことも、巨大な肉食魚類たちにとっては、餌資源に困らない条件のひとつとなっていると思われます。