撮影:高橋邦典

 ダライ・ラマはチベット人たちの心の支えでもある。

 チベット仏教では、すべての生き物は死んで肉体は滅んでも、魂は永遠に生まれ変わると考えられている。いわゆる輪廻転生だ。しかし人間が人間に生まれ変わるとは限らず、生前に行った行為の善悪によって、動物や虫に生まれ変わることもある。

 ダライ・ラマは観音菩薩の化身で、永遠に人間に生まれ変わりながら、チベット人を救済し、人々を浄土へと導くと信じられているのだ。

 「チベット問題は単なる政治的なものではなく、人類が古代から受け継いできた知的遺産に関する問題なのです。チベットの言語や文化遺産、仏教の知識を含むその遺産は世界的にも保護されるべきもので、その責任は中国政府にもあるものです」

 こう言うダライ・ラマ14世は、インドへの亡命後、「非暴力」を貫きながら、休むことなく国際社会にチベット問題を訴え続けてきた。彼に同情する国のリーダーたちは少なくないが、大国となった中国を相手にこの問題で喧嘩を売る国などない。残念ながら、チベット問題は、改善どころか、悪化の一途をたどっているようかにみえる。

(2012年3月撮影・高橋邦典)

フォト・ジャーナル<チベット人の焼身抗議>- 高橋邦典 第42回