[写真]ヤフー紀尾井町オフィスコワーキングスペース「Lodge」で開かれた憲法イベント

 日本国憲法は今年5月、施行から70年を迎えます。憲法論議が国会で動きを見せるなか、憲法について考える討論会イベント「憲法について議論しよう!」(主催:ヤフー株式会社)が同社のコワーキングスペースで開かれました。今回は「統治機構」をテーマに、憲法や統治システム改革に詳しい専門家が議論。会場に詰めかけた参加者が熱心に耳を傾けました。

 専門家として招かれたパネリストは、東京大学大学院の宍戸常寿教授、京都大学大学院の曽我部真裕教授、日本経済新聞社の清水真人編集委員の3人です。

 一般国民にとって「統治機構」という言葉には馴染みがありませんが、日本はすでに大規模な統治機構改革を経験しています。1990年代、衆議院に小選挙区を導入した「選挙制度改革」や内閣の機能強化を図った「橋本行革」などによる「平成の統治機構改革」です。

 統治機構とは、一般的に国会や内閣、裁判所といった国家機関をいいます。それらの役割を規定する法律も、国会法、公職選挙法、内閣法、国家行政組織法、裁判所法、地方自治法、財政法など多岐に渡ります。

 それに対し、憲法はすべての法律の上位にあり、憲法の規定を超えた法律はつくれないとされています。歴史的には、憲法は権力者を縛り、国民の権利を守るものとみなされています。

 そもそも憲法とはどのような存在なのでしょうか。

■憲法とはどんな存在か

[写真]東京大学大学院の宍戸常寿教授

 議論のイントロダクションとして登壇した東京大学大学院の宍戸教授は、憲法とは「国の組織作用に関する基本法」と説明。そして統治機構を支える理念は、現代の立憲主義の国家では「何よりも国民の個人の自由を確保するのが一番重要」で、その理念を具体化するために(1)法の支配、(2)権力分立、(3)国民主権という基本原理があるとします。

 そうした理念をどう制度化するかは、国ごと、時代ごとに異なります。

 例えば日本のような議院内閣制で中央集権の国もあれば、アメリカのように大統領制で、政治システムとして完結した地方単位で構成された連邦制の国もあります。

 「どのような制度化を行うかは、憲法を制定、あるいは改正する上で極めて重要なポイント」だと宍戸教授はいいます。そして、その制度が設計者の意図通り運用されているか、実際の運用状況まで見ないと「憲法の現実を把握できない」と語ります。

 日本が採用する議院内閣制では、有権者が定期的な選挙で国民の代表である国会を選び、その国会が政治的な意思決定を行う内閣を組織し、内閣が財務省や総務省などの省庁を指揮・監督します。この一連の流れの中で、国民から権力の「正統性」が授けられていきます。一方で、内閣や国会は国民に対して責任を負います。

 宍戸教授は、ここでいくつかの論点を提示します。

 (1)国会や内閣は政党によって運用されるため、政党の位置付けを憲法で明確に規定すべきではないかという考え方、(2)とりわけ第二次安倍政権以降について「内閣が強すぎるのでは」という見方です。「統治機構の運用上の問題を認識して議論することが憲法論議に必要不可欠」と述べました。

 また、平成の統治機構改革が「憲法」の改正は伴わず、法律の改正のみですべて行われたことにも言及しました。