このところ、ふるさと納税制度に対する批判が高まっています。都市部の自治体で税収が減ってしまったり、豪華な返礼品競争が過熱したりしており、一部自治体の首長は制度のあり方そのものについて疑問の声を上げています。ふるさと納税制度については、当初から、民主主義の根幹である税の公平性という観点において重大な欠陥があるとの指摘が出ていました。こうした批判が出てくるのは時間の問題だったといってよいでしょう。

総務省のふるさと納税ポータルサイト

 ふるさと納税は、任意の自治体に寄付をすると、その寄付金額の一部が所得税や現在住んでいる地域の住民税から控除されるという制度です。厳密には税金ではなく寄付行為ですが、住んでいる地域の課税が減免され、他の地域の歳入が増えるわけですから、実質的には税金と考えて差し支えありません。

 地域の行政サービスについては、サービスを受ける人が税金を負担するという受益者負担の原則があります。しかし、ふるさと納税制度はこの原則を崩してしまうリスクがあります。例えば大阪府に住んでいる人が、東北のある地域にふるさと納税をした場合、東北の自治体にはお金が入りますが、大阪府にはお金が入りません。

 しかし、ふるさと納税をした人は、大阪に税金を払っていないにもかかわらず、税金を全額払った人と同じ行政サービスを受け続けることができます。こうした行為が行き過ぎれば、税収を奪われる自治体のサービス水準が低下したり、公平性が保てなくなるという弊害が発生します。

 経済学者の野口悠紀雄氏などは、ふるさと納税制度について「地方自治制度を破壊するもの」だとして厳しく批判してきました。実際、都市部にある一部の自治体からは、税収不足が発生し、サービスの維持に支障を来す可能性があるとの声が上がっています。

 ふるさと納税のお礼に地域の特産品を贈る自治体も多いのですが、この行為がエスカレートし、一部では金券や家電などが贈られ、タダのバラマキになっているケースもありました。総務省は自粛を求める通知を出したものの、この通知に強制力はなく、豪華な返礼品は一部の自治体でまだ継続しています。そのような中、埼玉県所沢市が「制度の趣旨にそぐわない」として返礼の廃止を発表しましたが、これはまだ珍しい事例といえるでしょう。

 各地域に対する富の再分配が必要であれば、補助金など明確な手段で実施することが基本であり、使い道やその効果がはっきりしない形での実施は望ましい姿ではありません。このように問題の多い制度が、ほとんど議論のないまま導入され、幼稚な返礼品競争がエスカレートしていたという状況を考えると、日本は民主国家としてはまだまだ未熟なのかもしれません。

(The Capital Tribune Japan)