所有者が不明な農地を農業者が利用する権利を認める知事裁定が静岡県で実施された。平成26年度からスタートした農地中間管理機構を利用した制度にもとづく手続きで、静岡県によると制度化された平成26年4月以降、全国初となる。

 耕作放棄地(以前耕作していた土地で、過去1年以上作物を作付けせず、この数年の間に再び作付けする意思のない土地)は、年々、増加しており平成27年には全国で約42万ヘクタールにまで達している。国は、農地の有効利用を図るべく平成26年4月に農地中間管理機構を設立、同機構が農地の貸し借りなどのマッチングを担うことで農地利用を促進し、農業の集約化をはかっている。

 しかし、農地の所有者が不明な農地については、他の農業者が利用することが出来ず、荒廃した農地が放置されたまま残されているケースがほとんど。そのため、そのような農地については、知事などが裁定を行うことで、農地中間管理機構を通して農業者が農地を利用することが出来るよう制度化された。しかし、平成26年4月の制度開始以降、裁定まで進んだケースはなく、今回の静岡県が全国初めてのケースになるという。

 静岡県などによると、対象となった農地は東伊豆町稲取の畑地889平方メートル。東伊豆町農業委員会によって農地の所有者を確認する調査が行われ、昨年7月から6カ月間、農業委員会による公示が行われた。

 その間、所有者として名乗り出る者はいなかったため、東伊豆町農業委員会が今年1月20日に、静岡県の農地中間管理機構に通知。管理機構は現地確認をした後、1月25日に知事裁定を申請した。申請を受けて県は2週間の公告を行い、その後、県の農業会議に諮問。意見聴取を行い、2月28日に知事裁定が行われた。

 裁定を受けて対象農地の利用権が静岡県の農地中間管理機構に設定され、中間管理機構を通して農業者に利用権が設定される。利用する農業者は、対象地区の農地利用を申し出ている農業者から選定されることになるが、今回の場合、利用の申し出を受けて知事裁定に進んだ経緯があり、利用者は事実上、決定しているようだ。利用は5年間で、その後は改めて同様の手続きが行われるという。利用料も発生し、価格は周辺の地価等を考慮して決定されるという。

 所有者が不明な農地は、長い間、放置されて荒廃農地となっている場合がほとんど。利用するにしても荒れた土地を整備することから始めなければならず、こうした事情から制度があってもこれまで利用されることがなかったものとみられる。

 今回の静岡のケースは、農業者から利用希望があったため、全国で初めて裁定が行われて利用権の設定に至ったもので、静岡を皮切りに所有者不明で荒廃している農地の利用が今後、進むとは言い切れない。ただ、静岡県内においては、袋井市内の農地について、現在、農業委員会による公示が行われており、今後、所有者が現れなければ裁定に進むとみられる。

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